カプッチョ

イタリア山間部にある多くの地方都市は丘の上に築かれている。私の住んでいたペルージアも同様での200メートル位の高度があった。授業が終わりその街のセンター街を歩いていると、バール(カフェ)の外の椅子に腰掛けている数人の男達が手招きをする。見るとクラスメートのアラブ人ご一行だ?「チャオ!」と挨拶して近づき握手をすると、お前も座って何か飲めよという。カプチーノを頼んだが、まだお互いイタリア語は流暢でないので細かい話は出来ない。こんな時は「ボンジョールノ」はアラビア語で何と言うのだ!とか聞くと結構場が持てる。サラームだ「サラームか?日本語ではこんにちはだ」こんにちはか?皆が口々に言う。「ボナセーラ(こんばんは)」は何というのだ「サラーム」だ。これもサラームか?

おはようがざいますは?「サラーム」おやすみなさいは?[サラーム」さようならは?サラーム。行ってきますも「サラーム」ただいまも、ごめんくださいも、みんなサラームか?そうだ!(サラームとは平安という意味で、あなたに平安あれ!)アッラー(神)を称える言葉という。これは便利言葉だ!それからアラブ人に会うといつでもサラームと挨拶する事にした。そして次にアラビア文字で冨岡はどう書くのか?ノートを取り出し書いてもらうと、右から左にミミズが這うような横書きで、書きづらそう!ムハンマドは日本文字ではどう書くのか?と聞くのでとりあえずカタカナで書き、他の人にも順番に名前を聞きいて続けた。そしてお互いに笑いながら書き方の練習を始める。

そうこうするうちに頼んだカプチーノ(カップチョとも言う)はすっかり冷めてしまった。カップチョを飲み干し「さあ行くか、いくらかな?」会計しようとすると、彼が払うからお前は払わないでいいと言う。そして全員の勘定をこの一人の男が払った。聞くと彼の家は親が石油関係で富豪だという。ダッチカウント(オランダ方式の割り勘)に対し、アラブカウント(金のある人が一人で全部払う)というのがあるらしい?(金持ちは貧しい人に施す)「グラーツィエ(ありがとう)」彼に礼を言うと、ムハンマドがこれはコーランに書いてある当然の行為!礼なども言う必要ないよと言ったのだが・・・。

基本人種間での思考、感情などはあまり変わらない。でも慣習やマンナーはその民族の宗教、歴史により変わることはよくある。

(千葉県八千代市勝田台、勝田陶人舎・冨岡伸一)

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