チマキ
機首を何度か左右に振る。「おー、やばい高層住宅にクラッシュか!」と思わず肘掛をつかむ。瞬間飛行機は大きく左に旋回し難をのがれた。林立するビルとの距離は、ベランダで憩う人たちの姿がはっきりと手に取るように見えるほどだ。そして高度はグーンと下がり両側に見えるビルが後方にすっ飛ぶと、あっという間に海に浮かぶ狭い飛行場の滑走路に、ドーンという振動と共に滑り込んで行った。「うー、怖えー、なんでこんな場所に飛行場なんか作るんだよ。事故がない方が不思議だ」と思ったが土地の無い香港ではしかたない。当時まだ香港はイギリスの植民地であり共産中国から逃げ出す人々も多く、人口過多で早くから高層住宅の建設が盛んであった。でもそのあと香港が中国に返還されると、この危険な飛行場は新しく作られた別の広い場所へと移っていった。
今日テレビを見ていると香港飛行場がゼネストのため、すべての航空便が欠航となっている映像が流れる。ロビーではたくさんの旅行者でごった返すが直ぐの再開は難しそうだ。原因は香港のキャリー・ラム行政長官が、先に提出した香港から中国本土への容疑者引渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案の施行だという。そこで数ヶ月前よりこれに反対する香港市民が立ち上がり、週末に大規模デモを繰り返すようになった。そしてこのデモがエスカレートし、空港封鎖に及んだようだ。そもそも20年前に香港が中国側に返還されたとき、50年間は香港の自治を尊重し「一国二制度」で行くという条約を英国との間で批准しているはずなのだが、中国も韓国と同じく約束は守らない。
香港デモは米中代理戦争の様相だ。これだけの組織的大規模デモを行なうには金もかかるという。その金はどうもアメリカCIAから流れている情報もある。工作員も多数潜入しデモを煽っていると中国は主張する。一方このデモを妨害し白服を着て参加者を棒で叩くのは、中国政府に金で雇われた地元犯罪組織(三合会)であるという。いずれにしても香港住民も必死で抵抗しないと大変なことになる。共産中国の弾圧から逃げてきた人も多く、独裁国家の怖さを身にしみて知っているはずだ!金持ちはカナダやオーストラリアなど海外にとっくに逃げ出し、金の無い一般人だけが残っている。でもある日突然香港に戒厳令がひかれ共産軍がなだれ込むと万事休す。「可哀そうだが、ジャ、チャン!」首謀者が逮捕され終わる。
でも共産中国の香港占拠は多大なリスクも伴う。外国人や金融会社が去り一瞬にしてアジアの金融センターが崩壊し、中国と世界のマネーの仲介基地を失う。(香港といえば名物はチマキですか?勝田陶人舎・冨岡伸一)