歌声喫茶
「アメリカンポップスとロシア民謡のどちらが好きですか?」と聞かれたら当然ポップスと答えた。私が小学校高学年の頃、ラジオからは頻繁にダイアナや恋の片道切符など、当時ポップスといわれた軽快な流行歌がながれてきた。それら英語曲を音だけ真似て適当に拾い口ずさんでいたが、中学、高校へと進むとアメリカンポップスの勢いは増し、テレビでもいくつかの歌番組が人気となった。なかでもヒットパレードという番組が放映されると、アメリカンポップス流行はピークとなる・・・。しかしイギリスからあのビートルズが劇的に登場すると、ポップスの中心はロンドンへと移っていく。それに平行してベトナム戦争にアメリカが参戦すると、華やかだったアメリカンポップス・カルチャーは徐々に衰退し、浮かれていた若者達は徴兵され、どんどん戦場へと駆り出されていった。
このころ日本では働く若者を中心に歌ごえ喫茶などで、大勢でロシア民謡などを歌うこともブームとなっていた。ロシア民謡は戦後シベリアの抑留者達が帰国して広めたという。「歌を歌いに行かないか、結構楽しいよ」と近所に住む会社勤めを始めた先輩に誘われて、市川駅に程近い神社脇にあった消防団二階の集会所に連れて行かれる。そこでは夕方になると週に1,2度ギター片手に歌好きな若者が集まるり、歌声喫茶のようにロシア民謡や流行歌などを歌う。しかし何か様子がおかしい?時々政治話などをする。噂でそれは共産党の下部組織(民青)の主催だと聞いたのですぐに行くことをやめた。このころ労働組合や日教組など左翼運動も盛んで、各地の集会で勧誘活動などが行なわれていた。天皇制を廃止して日本もすぐに社会主義国家に!と叫ぶ人たちが多くいたのだ。
ところでいま共産党員の平均年齢は70歳なのだという。若い人がほとんど入党しないらしい。このままだはあと5年もしたら党は無くなると、関係者は危機感を抱いている。機関紙赤旗の発行部数も100万部を切ったらしい。国から党の助成金も貰わず財政は火の車だとも聞く。このままイデオロギーに固執し党規約なども変えずにいると共産党は本当になくなるかも?だいたいマルクスの考えた平等論に立脚した共産主義などしょせん無理がある。人は平等が大嫌いなのだ!人の上に立ちたい、人を凌駕、支配したいの感情は誰でも持つ人類のサガ。中国共産党のように理想論を掲げても、時が過ぎれば汚職と賄賂で不正蓄財。以前より極端な階級社会になる。
AIの進化で人々の思想や行動を国が管理し易くなると、一歩間違えれば自由や民主主義の脅威となることもある。(勝田陶人舎・冨岡伸一)