茶飲み話・ワビ住まい。

 

「我が晩年は詫び住まいをしたいと願い50歳の時に陶芸庵をつくった」。私はどちらかと言うと若いころから人付き合いが苦手で、学校や会社などの組織との係わりを嫌った。そのため青春時代は読書などをして一人で過ごすことが多く、漠然と自身の人生を俯瞰し思い悩んでいた。そして導きだした結論は早めにリタイアし、好きな事をして余生を送る理想だった。

そしてもう一つは日本を抜け出し、海外逃亡する夢もみていた。そのため語学の習得には多くの時間を割いたが、フランス語は町を散策するのに困らないレベル。英語、イタリア語は簡単な日常会話程度である。そして実際にフランスに3か月、イタリアに1年暮らしてみたが、自分の情念は典型的な日本人で、個人主義が徹底する欧米にはなじまない性格であることをよく理解した。

それに長男でもある私は両親の老後の面倒をみるという必然もあり、勝手する状況にない。そこで早めに所帯を持ち現実生活にドップリ浸かることになる。でもたまたまシューズデザインという職種と出会い、27歳でデザイナーとして独立し、組織との係わりを軽減できたのは非常に幸いであった。でもこれは当時、私の周りにいた方々ご支援によるものであると感謝しきりである。

でも実際に詫び住まいをし、作陶している現在はいかがですか?と問われれば確かに何のストレスもなく、快適であると答える。詫び住まいとは粗庵にこもり、自身に飛来する全てを受け入れ、自然に任せてシンプルに過ごすこと。そしてまたサビとは、古びた物や不完全なものを愛でる心だと達観するのだが・・・。

「わかっちゃいるけど止められない」。生前クレイジーの植木等さんがスーダラブシを歌ってブレイクすると、住職であった父にくだらない歌を歌い詫びをいれる。すると父はお前もそうか「我が宗祖、親鸞聖人も同じことを語っておる!」と真顔で返したという。無我の境地で茶碗を作りたいと願うも、我欲の炎はまだ燃え切っていないらしい。(フォローありがとうございました。皆様よい年をお迎えください。勝田陶人舎・冨岡伸一)

 

 

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