茶飲み話・10円玉
私は幼児の頃の記憶は鮮明に覚えていて、昭和26年に10円玉が初めて発行された日の記憶もある。当時4歳だった私は小遣いとして父親から日々10円札を手渡された。そして四つ折りにされた紙幣をポケットに、駄菓子屋に駆け込む。買うものはいつも鼈甲飴、鉄砲飴、キャラメルなどの甘いお菓子だ。日本が戦争に負けサトウキビの産地であった台湾を失うと、一気に砂糖の価格が高騰する。そこで子供たちの多くは甘いものに飢えていたのだ。
「ええ、なにこれ綺麗だねー」ピッカピカに光る初めて見る10玉に驚く!今までのクチャクシャな10円札とはえらい違いだ。ちょうどこの頃、朝鮮戦争が始まりアメリカ軍の物資調達基地になった日本は好景気に沸く、そして貧困にあえいだ生活にも戦後復興の足音がきこえてくる・・・。引き戸を開けニコニコ顔で駄菓子屋のおばさんに10玉を手渡すと、叔母さんも繁々とその硬貨を眺めた。
それから70年以上10玉を使い続けるが、個人的には10円銅貨はそろそろ消えるのではないかと思っている。理由は10円銅貨のコストの問題である。昨年でも10円玉を作るのに13円ほどかかっているが今年に入っての急激な銅価格の値上がりにより、現在では18円位になっているはずだ。これからは電気自動車の普及やAI人工知能の進展により、伝導率の良い銅需要は爆増する。
すると当然銅価格は毎年上昇していくので、10円玉の製造は大きくコスト割れとなる。今はまだ誰も言わないが、もうすぐ10円玉の銅価格が10円以上になる。「そろそろ昔やっていた豚の貯金箱に10円玉でも貯めてみるか!」紙幣は価値が減るが銅銭は銅価格と共に値上がりしていく。近い将来古銭商に10銅貨を持ち込むと30円になることだってあり得る。その場合受け取るのは当然デジタル通貨になる。
金ゴールドを少し集めたら値上がり続けた。安かった銀を集めたら今値上がりしている。すると銅貨を集めたら老後の小遣い銭ぐらいになるかもね?(笑)数年先、ある日突然10円玉が市場から消えることもありえる。そこで箪笥の引き出しの古い衣類を処分して10銅貨でタンス預金してみたら!だって初期の鳳凰の100円銀貨は古銭商では400円もするのです。(貴金属だけでなく銅やアルミの非鉄まで値上がりし始めた。勝田陶人舎・冨岡伸一)