ネギマ

毎年新年になると築地の市場では初競りが行われ、いつもあのスリムでハンサムな回転寿司の大将がマグロを高額で競り落とすのが恒例になっている。去年築地市場は色々課題を抱えながらもやっと豊洲に移っていった。新市場での初競は特に御祝儀相場となり、一本の大マグロに数千万から憶の値段がつくことがある。バカらしいと思うが、マスメディアのニュースに乗るので宣伝費と考えれば安いともおもう。でも従業員からすれば「その金ボーナスに回してよ」などと言いたくもなる。マグロといえば先日、居酒屋で久しぶりにネギマを食べた。ところがこれが全く旨くない!子供の頃、母親が作ってくれたあのネギマとは全く別物で、油分が無くパサパサだ。どうせ安いキハダマグロのブツなどを使っているのであろうか?

私の子供の頃のネギマはとても旨かった!当時マグロはたくさん水揚げされ値段も安く、我が家のネギマには本マグロのオオトロが使われていたのだ!その頃オオトロは刺身のネタでなく、主に煮物用として売られていたようである。冷凍技術の良くない時代オオトロは赤身よりも傷みが早く、刺身に向かなかったのかも?でも脂肪分の多い大トロは油っこく、当時の人には好まれなかったのも確かだ!マグロは赤身が上等で腹にいくほど味が下品だと親からも聞いたことがある。でも大トロをネギと煮るネギマは実に旨い!身が柔らかで油分が多く口の中でとろける。しかし子供の頃あんなに旨かったネギマだが、その後歳を重ねる程にだんだんまずくなる。

時代が進むと日本人の味覚が変わり始め、肉食の頻度の増加などから徐々に脂肪分の多い食品を好むようになる。するとマグロも赤身よりトロのほうが人気が出てきて、赤身との価値が逆転する。それとともにオオトロの安い煮物用ブツなどは魚屋の店頭から消えてていった。母親に「最近作るネギマ旨くない」と文句を言ったら、「そうね、昔みたいな脂の乗ったブツが売ってないのよ!」との返答だ。最近あの頃のオオトロで作ったネギマを食べたいと思うこともある。でも本マグロのオオトロなど高額だ。するとオオトロで作るネギマは今後も食べる機会は無いかも?戦後食糧難の頃わが国の漁船は太平洋のいたる所へ、マグロを捕獲に出かけた。するとあの第5福竜丸がビキニ島近海でフランスの核実験に巻き込まれ、放射能を浴びたマグロは原子マグロと呼ばれ話題となった。

わが家では床の間の花活けも私の仕事。後ろの地味な掛け軸は矢野橋村作です。今年は喪中なので新年の挨拶は省略します。

(千葉県八千代市勝田台、勝田陶人舎・冨岡伸一)