先日、友だちと昼時に鮨屋に入ったら、ランチでアナゴ重1100円と書いてあった。ウナギは好物だが最近は値段が高く、時々しか食べる機会がない。「アナゴでもいいか!」と頼んでみたらこれが結構うまい。(ウナギと違って身も薄く柔らかいので食べやすい)それにウナギより脂が強くなくさっぱりしていて、年寄り向きだ。ウナギの不漁が続き資源保護のため禁漁になったら、ウナギの代役をするのは近大ナマズかこのアナゴだろうか?でも私が感動したアナゴはやはり千駄木にあるアナゴ寿司のレジェンド「乃池」である。なにしろここのアナゴ8貫は最高!一度食べたらやみつきになること間違いなしだ。最後の晩餐に選ぶとしたら3本指に入ると思う。
「そう言えば、アナゴの刺身ってあまり食べたことが無い!」ウナギと違いアナゴは海に棲むので、当然刺身で食べられるはずだが、なぜ一般的ではないのか?実はウナギやアナゴは血の中に血清毒を含んでいて、大量に摂取すると死ぬこともあるという。しかしよく血を洗い、一人前程度なら余り問題にすることもないそうである・・・。数年前姫路の料理屋でアナゴの刺身を食べたことがあった。身がシコシコ歯ごたえがあり、脂が乗って旨かった。でも通常江戸前寿司ではアナゴは白焼きで詰めを付けるか、煮アナゴのどちらかだ。
アナゴは東京湾のアナゴより瀬戸内海産の方が旨い気がする。もう30年近く前になるが、岡山県にある備前焼の窯元を尋ねた。帰り道タクシーの運転手さんに「どこか魚の旨い店ない」の問いかけに案内されたのが、日生(ヒナセ)という瀬戸内の小さな漁港前の鮨屋である。ここのアナゴも実に美味かった!一匹丸ごと頭つきで裂いて串に刺し焼いたあと、タレをつけて二度焼きしたようだが、江戸前にはない肉の厚みと深みのある味であった・・・。またここで出されたシャコも絶品!(東京湾でとれるシャコとは全く別物で泥臭くない)それに活きたシャコの色が薄緑でとてもきれい。瀬戸内は東京湾よりもプランクトンが豊富なのか、近海魚は相対的にどれも旨い。
あの日生のアナゴも死ぬまでにもう一度食べたいと思うが、遠方でなかなか行く機会が無い・・・。(千葉県八千代市勝田台、勝田陶人舎・冨岡伸一)