ビアンコ

早朝ご飯の香りがキッチンの方からほのかに漂う、そろそろ炊きあがるようだ。「さてと、オカズは何にするか?」ゆっくりと立ち上がり冷蔵庫の扉を開け、中を覗く。私は出勤が朝早いので朝食は自分一人で食べることが多い。でも炊き立ての熱い飯はそれ自身うまいので、特別にオカズなどこだわらなくてもよい。明太子や子供の頃によく食べたオカカなどがあれば、それで充分だ。特にコシヒカリなどのブランド白飯はかすかな甘味もあるので、オカズはなるたけシンプルな方がよいこともある。これはご飯に限らず、焼きたてのパンや茹であげたばかりのパスタなどにもあてはまる・・・。以前イタリア在住時に毎日学食やレストランでパスタを食べていたが、いつもミートソースやトマトのポモドーロソースでは飽きがくる。

ある日ミラノのレストランに入りパスタメニューを見ていると、パスタ料理の項目の下のほうに必ず書いてあるのがビアンコだった。「ビアンコってなに?」(イタリア語で白という意味)ビアンコか?なんだろう。不思議に思い注文してみると茹で上げたパスタにオリーブオイルを絡め、パルメザンチーズを降りかけただけの(日本人が常食する白飯にオカカに似た)極めて簡素なパスタであった。パスタを常食するイタリア人がオーダーするパスタの殆んどはこのビアンコである。しかし旅行などで来る外国人にはソースのかからない白いパスタなど、わざわざレストランで注文する料理ではないと思うのは当然だ。でも長くイタリアに滞在し食べ続けると、外国人でもシンプルな味のパスタを求めるようになる。

そもそもパスタはイタリアのコース料理の中ではプリモピアット(最初の皿という意味)でスープのグループに入る。通常イタリアのレストランに入ると全てがコース料理で、一品料理の注文は出来ない。最初に頼むアンティパスト(前菜)、プリモ(第一料理のスープ)、セコンド(第二の魚)、テルツォ(第三の肉)、デザート、最後にカフェへと進んでゆく。そのためパスタはプリモのスープ料理の項目に入り、ズッパ(野菜スープ)とパスタのどちらかを選択することになる。基本プリモだけのダブルオーダーはできない。(パスタは汁の無いスープと捉えればよい)かつてレストランに入り、空腹でないのでスープとパスタを頼んでみたことがあったが、ボーイに軽く断られた。でも私ではなく美人の女性のあなたなら受けることがあるかも。ルールはあっても状況次第でコロコロ変わるのがイタリアだ。

イタリアのレストランではこのビアンコとミートソースの値段が余り変わらない。良いパルメザンチーズが手に入ったら一度ためしてみてください、結構うまいですよ。(千葉県八千代市勝田台、勝田陶人舎・冨岡伸一)

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