私は戦後生まれなので、先の大東亜戦争のことは知らない。ただ物心ついた時が昭和20年代であったので、あちこちに色濃く戦争の傷跡がまだ残っていた。記憶に残るのが上野駅界隈の情景で、特に国鉄と京成をつなぐ地下道には雨露をしのぐため、多くの浮浪者がたむろしていた。「早く歩きなさい!」とグイグイ引く母の手。小便臭さと息苦しさで噎せ返る地下道の階段を駆け上がり外に出ると「ふー!」新鮮な空気に一息つく・・・。戦後私の母親は子だくさん家計のたしにと、かつて勤めていた第一銀行上野支店に週の何日か通っていたことがある。幼児であった私は一度母親に連れられその銀行に同行。他の若い行員さんが私をかまってくれたり、今では考えられない銀行の職場環境であった。
またあの時代に逆戻りか?先日アカデミー受賞と話題になっている韓国の「パラサイト」という映画を見た。邸宅に住むリッチな企業経営者家族とスラムに住むメイド、運転手、家庭教師など使用人との確執を描いた作品である。実際に韓国では日本以上に格差社会が進行中で、一流大学を出てサムソンなど財閥企業に就職できなければ、低賃金のサービス業や肉体労働の仕事しかないという。韓国ばかりでなく最近貧困や格差社会をテーマとした映画が各国で製作されて話題になっている。イギリス映画の家族を想うとき、日本の万引き家族、韓国のパラサイトなど物語は様々だが、どれも新たな貧困が主題だ。今まで普通に生活していた中産階級がグローバル化の推進と共に。本人の努力によらず没落し下層階級に沈んでいく。
アメリカでは次期大統領選挙も始まり、民主党の候補者選びでは社会主義的思考の強いサンダース上院議員が、経済弱者や若者の支持を得てトップを走っている。ごく少数のグローバル企業トップの莫大な富蓄積に対して、多額の学費ローンを抱える若者や、住宅ローンに苦しむ中産階級は借金漬けで不満が渦巻く。そのため彼はこれを正すとアッピール!貧困の原因は日米欧ともにそうだが中国台頭による製造業の雇用喪失と外国人労働者流入による賃金低下である。アメリカファーストを掲げるトランプさんも中国を始め、海外に出て行った富をもう一度自国に戻すための政策を進める。結果中国はおろか、日本からも富がアメリカに回帰することになる。せまる貧困に立ちすくむ先進国の中産階級、前途はシネマの映像のように暗いのか?
C型肺炎対策など問題山積の中、国会では野党が相変わらずサクラの会を糾弾。安倍首相降ろしを画策する。でも安倍さん以外にどなたか首相候補がいますか?最近の政財界の人材不足には飽き飽きだ。(勝田陶人舎・冨岡伸一)