出前
ついにコロナウィルスの蔓延で東京がロックダウン封鎖されようとしている。それより先にニューヨークではすでに外出禁止令が出て、移動が著しく制限されているようだ。こうなると人々は食品などの日用品の買い物以外は自宅に篭り極力外出を控える。そしてレストランやカフェも店をクローズし、ドライブスルーやテイクアウト以外の営業は出来ない。すると店内の接客にあたるホールスタッフは突然解雇で翌日から職を失う。アメリカのサービス業の雇用形態はほとんどが日本でいうフリーター、週給制なので家賃やローンもすぐに滞る。すると喰うに困った一部の人が犯罪に手を染める。そこで今食品などと共に密かに買いだめされているのが、強盗から身を守るための銃や銃弾だという。アメリカの銃社会の現状は真に恐ろしい!
「すいません、いま作っています!」出前で頼んだラーメンが1時間過ぎてもまだ届かない。すきっ腹に耐えられず催促電話をかけると返答はいつもこれだった。忘れてましたとか、混んでいるのでとかは決して言わない・・・。われわれが子供の頃、鮨屋、鰻屋、蕎麦屋、中華料理屋などでは、通常出前で売り上げの大半を稼いでいた。とくに蕎麦とラーメンは値段が安いので、わが家でもちょくちょく出前をたのんだ。するとラーメンなどは自宅に配達される頃にはソバがのびて液を吸い柔らかくなる。親はまずいと言っていたが、私はこの伸びたラーメンけっこう好んで食べていた。しかし日本が高度成長をむかえると、人手不足になり単価の安いラーメン、ザル蕎麦などの出前は徐々に減っていく。
ところが最近のコロナウィルスのパンデミックで再び活気づいているのが、この出前サービスである。ピザのデリバリーはもとから人気があったが、先日老舗の寿司屋の前を通ると「出前始めました」との張り紙が!なんとなく時代を感じた。そして最近宅配といえば何と言ってもアマゾンである。GAFA(ガーファ)と呼ばれ世界を牽引してきた、グーグル、アマゾン、フェースブック、アップルのなかでも、特にアマゾンの宅配ビジネスは世界を席巻している。スマホで何でも注文できるこのサービスは、店舗の存在を著しく否定し続ける。そしていま店を借り家賃と人件費を払ってまで成り立つ商売など飲食くらいだ。時節がら人との濃厚接触の少ない宅配サービスはアマゾンにとってますます追い風となっている。
工房のある勝田台の駅前商店街の靴屋が先日店を閉めた。次に店舗を借りる人も無く、また一軒シャッターの開かない店が増える。(勝田陶人舎・冨岡伸一)