粗大ゴミ
3年ほど前のこと。もう半世紀近く前から使っていた小さな冷蔵庫が、ついに壊れたので処分することにした。しかしずいぶん長持ちしたもんだと感心する。当時日立のモーターは絶対に故障しない!とのふれこみを受けての購入であった。今の冷蔵庫と違って半導体など余分な部品がなく、単純なため動き続けたのだと思う。ところがこの冷蔵庫の廃棄処分には困ることになった。車の荷台に重い冷蔵庫を載せ、市営のゴミ処理場へと運んだのだが、係員に「冷蔵庫はここでは受け取れないのです。買った電気屋に持っていってください!」とつれない返事だった。困った、買った電気屋はとっくに店をたたんで今はない。しかたなく懇意にしている街の電気屋に引き取ってもらった。しかし7千円の処理代にはビックリ。昔ならクズ鉄屋に五百円位で売れたのに、今はゴミや不用品は全て金を払わないと引き取らない。
「えー、嘘だろうそんなこと絶対にあるわけない!」朝起きてニュースをみていると、なんと原油価格がバレル・マイナス35ドルに急落したと言う。間違いだろう?にわかに信じられないこの現象に驚き、ネットニュースで確認するも事実であった。どうしてこんなことになるのか?色々調べてみると、このコロナ騒ぎで燃料をがぶ飲みする航空機が殆んど飛ばず、また各国の都市封鎖で自動車も動かない。そのうえ最近アメリカのシェールオイル開発で原油はだぶつき、オペックの原産合意も予定より少量であった。そのため通常はリスクヘッジとして機能している原油先物価格の決済日に原油の買い手がない。そこでお願い、金を出すから原油すぐに引き取ってちょうだい!ということになってしまったらしい。
買い手は原油をタダでもらえるうえバレル(1樽)35ドルの引き取り料も受け取れるのだ!これならだれでも喜んで受け取ると思うのだが、最近の原油価格の低迷ですでにどこの国のオイルタンクも満タンで保管する場所がない。生産者も原油の掘削を一度止めると、再開には金もかかるという。でもこの現象はたまたま先物の決済日に起こったことで、原油の現物価格は低迷しているが10ドル代で推移している。そこでわれわれがタダで石油を手にすることはない。特にガソリン価格はリーターあたり53円の税金がかかる。輸送コストや精製コストも別にかかるのでいくら安くても、リッター百円を切ることはないのでは?本当にこのコロナ騒ぎは日々何が起きるかわからない。通常貴重な原油が、粗大ゴミに化けた歴史的瞬間であった。
最近ほとんど車に乗らない私は、ガソリンスタンドでのセルフ給油の仕方が今だに分からない。店員を呼んできて聞いても時間が経つとまた忘れる。スーパーのレジ、飲食店でのタブレット注文とシルバー世代には憶えることが多すぎる。(勝田陶人舎・冨岡伸一)