茶飲み話・漢字
「白髪三千丈・縁愁似箇長・不知明鏡裏・何処得秋霜・・・」。高校時代大嫌いであった漢文の授業で、印象に残る唯一がこの李白の秋浦の歌である。口語訳を書くと、白髪は三千丈もあるであろうか?思い悩みが原因で、このように長く伸びたのであろう。こうして鏡に映っている私を見ていると、どこからこの霜を身に受けたのであろうか。
この歳になると実感を伴うこの歌を読んで、まず単純に気になることは三千丈という白髪の長さのことである。三千丈は約933キロもの距離であると言うので、アニメの妖怪の世界以外には実際にはありえない。今ギネスにものる、髪の一番長いインド女性頭髪の長さが、190センチだと言うので、2メートルぐらいが人類の限界であると思う。中国人は昔から自国や自分を過大に表現するので、日本人の謙遜の美徳とは異なり違和感を感じる。
「漢字はわれわれ中国人が日本に伝えた!」無印良品、松坂牛、静岡茶などの漢字名を中国で勝手に使うなとクレームをつけると、ではその前に漢字の使用料を払え!など口走る中国人も多くいる。確かに日本では漢字を使用しているが、現在使用している当用漢字は日本で改良したものが殆んどだ。中国でも近年画数の多い漢字をことごとく簡略している。でも漢字が変に省略されて日本人には推測できない字も沢山ある。こうして中国は自らの歴史文化をまた一つ壊していく。
韓国では近年、氏名以外は全てハングル文字で、もう漢字文化を捨てた。中国でも漢字を簡略する時に、一緒に統一しませんか?と日本から声をかけたが、彼らはそれ無視して独断で実行したのだった。案の定短期で決めたので書道に移すとバランスの悪い文字もある。日本の当用漢字は書道で書きながら長い年月をかけて簡略したので、美しく元の漢字が読み取れる。
コロナ前には日本に観光に来て、古都奈良の法隆寺を尋ねると懐かしさのあまり感涙する中国人が多くいたらしい。もう本国には唐代の木造建築など全く残っていない。将来正当な漢字も日本以外では見かけなくなるなど、シャレにもならないのでは・・・。(勝田陶人舎・冨岡伸一)