茶飲み話・メタ
「いよいよ大変な時代になりますよ。皆さん!」こうして日々ネットで情報のやり取りに使うフェースブックが、先日社名変更をした。しかも新しい社名がなんと「メタ」なのだ。メタとはメタバースすなわち仮想現実を表す造語である。これはフェースブックのザッカーバーグ社長が、いままでの通信業務から徐々に業態を広げ、次の新たなテクノロジーであるバーチャルリアリティーの世界に、大きなビジネスチャンスが生まれると考えているからだ。
パソコンやスマホを眺め、お互いにモニターで情報のやり取りをしている時代はまだよかった。ところがこれからは特殊なゴーグルをかぶると、いままで人類が経験したことのない、まるで現実世界のような立体的仮想空間に侵入できるようになる。するとそこには様々なアプリが揃っていて、たとえば「南海の楽園」のアイコンをポチっとタップすると、一瞬にして美女の待つ白い浜辺にまっしぐら!なんてことが起きるかも?
「冨岡さん、お食事ですよ」とロボット看護士のアイちゃんに肩をたたかれ現実に戻る。「なんだよ、いま良いところなのによう」としぶしぶ私は体を起こしゴーグルをはずした。もうこのホームに入所して2年になるが、最近では殆んどの時間をゴーグルをかぶり仮想世界で過ごしている。あちらでの生活は楽しい。自分のアバター(化身)は20歳、180センチのイケメン設定なのでモテモテのピッカピカ!
ここでは年齢、ルックスなどは全く関係ない。なりたい自分にいかようにでも変えられる。最近若い男を演じることに飽きたので、明日からは女性に変身だな。「とりあえずお目めパッチリ、ナイスバディーの若い浜ミエでいってみるか」。なにしろあちらでは整形し放題で美男美女しかいないのだ・・・。とまあこれは私が予想する近未来10年後の介護老人施設での話である。
宗教では人が死ぬと天国に行くと説く宗派が多い。でも死後の世界など実在するのか?誰も分からない。人間にとって天国こそ謎とされてきた最大の仮想世界なのだ。AIが加速度的に進歩している現代、死んで天国に行くという幻想すら可視化できるかも?「天国に行って両親に会いたい」と望むあなた!「大丈夫です、このヘッドマウント・ディスプレイをかぶりなさい」イメージすればお母さんが現れますよ。(ロボット介護士つきケアハウス、メタ・バーチャル見放題。月額0.02ビットコイン。勝田陶人舎・冨岡伸一)