茶飲み話・将棋

 

「何が悪かったか分からない」とは先日、王将戦で藤井聡太くんに敗れた羽生さんの対局後の感想である。私はこの言葉を聞いて将棋界に君臨し続けた名人羽生善治をしても理解しがたいと言わせる、この二十歳の青年の思考回路はどうなっているのか?非常に興味を感じた。彼はたぶん通常の人類でなくサイボーグ(電子機器などを埋め込んだ人造人間)かも。

でも彼は時代が生んだ寵児でもある。ことし52歳になる羽生さんの子供の頃はまだパソコンが普及しておらず、先輩などの人間と対局し腕を磨いていた。ところが藤井君はデジタルZ世代なので、生まれた時から身近なパソコンAI将棋と対局し、コンピューターに勝つ訓練を重ねていたらしい。結果人間では思いつかないようなトリッキーな戦法を編み出し、羽生さんをほんろうさせている。

そして藤井君の後輩にはAIを駆使した将棋の天才児達もいるそうで、藤井君すら安穏としていられない状況であるという。現在このような状況は将棋だけでなく全ての業種で見られ、AIを駆使できるかどうかで人の能力が判断される時代である。そのため記憶力に優れ、頭の柔らかい若者が世の中を牽引し、デジタルに乗れない熟年は社会の隅へと追いやられる。変化の乏しい時代には経験豊富な年寄りは尊敬されたが、今や旧来の知識などほとんど役立たずである。

「任天堂って、確か花札を売る会社だったよね」。私が子供の頃、正月になるとコタツに入って家族で花札で遊んが、花札はむかし賭博に使われていたので、いまいちイメージは健全ではなかった。そんな花札をあの任天堂はコツコツ販売し生業としていたのだ。ところが1970年代後半にテレビゲームに進出すると一世風靡し今日の礎を築いた。

近年デジタルゲームが進化すると、トランプ、花札、マージャン、囲碁、将棋といったアナログゲームは衰退する一方である。しかし将棋界ではデジタル棋士藤井君の出現により人気が復活した。あと5年もすると医学やサイエンスを初め、全ての分野で劇的に世の中の仕組みが変わる・・・。(有史以来もっとも激動の100年を生きているという認識が大事だと思う。勝田陶人舎・冨岡伸一)

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