茶飲み話・非常識

 

「日本の常識は世界の非常識!」と発言し、日本を欧米型個人主義社会に変えようと尽力していた一人の経済評論家がいた。彼の名はT・K、もう30年以上も前に日曜テレビ討論番組などで見かけた、禿を隠す独特のヘアースタイルとパイプをくわえた風体のアメリカ礼賛グローバリストである。彼は日本のローカルな村社会的国体やイエス・ノウをはっきり言わない国民性などを批判していた。

ところがそれから現代にいたっても日本人の民族性は殆ど変わっていない。でも最近はそのローカルな国体が逆に外国人から非常に評価が高い。日本に行けば何か自国と違う異文化体験できると人気があるのだ。欧米などは国境を開き、移民を大量に受け入れたため自国の文化が希薄化し、ごった煮の闇鍋状態になっている。そのため治安は悪化し、女性が夜一人で歩くこともできない。

「水から投入した昆布は沸騰する前に鍋から引き上げる。次に鰹節を入れたら1分弱で取り出す」。これは日本料理の原点である透き通って透明な「お出汁」の取り方である。濁らない「出汁」へのこだわりは、まさに料理だけでなく日本人の精神的美意識の根源であると私は感じている。日本文化は透明で清楚、清潔で純粋、そして混濁を避けるのが理想なのだ。

日本にはグローバル化の遅れにより、海外に汚染されない伝統、文化がまだ多く残っている。それを楽しみに現在多数の外国人が日本にやって来ていて、大きな観光資源になった。先進国でありながら英語があまり通じず批判も受けるが、言葉が通じないところが外国旅行の面白いところでもある。ウェルカムの気持ちがあれば心は通じ合う。

世界で行きたい国のナンバーワンになった日本に、この連休も多くの外国人達が押し寄せてきた。京都や奈良などの観光都市はもとより、東京や大阪のような大都市までがオバーツーリズムのためホテルの予約が取れない状況が続く。「日本の常識は世界の非常識」という異文化性が、逆に高い評価に変わった。(人手不足から安易に移民を多数入れ、「お澄まし」が「闇鍋」にならぬよう望むところだ。勝田陶人舎・冨岡伸一)

 

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