茶飲み話・時
「今日は何をテーマに書こうか?」などと考えても一向に浮かばないこともある。もう一時間ほどキーボードを眺めるが何も進展しない。こういう時は自分が過去に陶芸を始めたきっかけなどを書いてみるのもよいのかも・・・。そもそも私の場合、その原点は青春時代の過ごし方に起因する。当時は自分の将来に希望が見いだせず暗中模索で過ごした。
元来学校や会社などの組織に身を置くのが大嫌いで、出来れば避けたいと常に願っていた。でも経済学部などに進んだ私には、とりあえずサラリーマンになる以外の選択肢は思い浮かばない。そこで紆余曲折はあったが、とりあえず会社勤めをすることになる。でも運よくシューズデザインという職種に出会い、その会社で3年間サラリーマン生活をした。
その後会社を辞めフリーランスでデザイン活動を続けるが、いつも心の片隅にあるのは「この仕事って、自分のライフワークでないはのかも?」の問いであった。しかし結果として70歳過ぎまで仕事を継続することになるので、適職であったことに相違ない・・・。でもアートがしたいの欲求は強く、並行して40歳の時に陶芸を習い50歳で工房を立ち上げると、しばらくの間は陶芸の面白さにはまる。
「休日などいらない!」と勢い込んだ!その頃は週4日浅草のデザイン事務所に通い、週3日八千代市の工房に出かけた。でもこのバランスが実によい。好きなことを仕事にしているので、陶芸に飽きれば浅草に行き、喧騒を感じると森を眺めロクロを回す。休みなどなくてもストレスとは無縁だった。なにしろ両方とも趣味が仕事なので気楽なもんだ。(今となれば余裕で言える、笑)
そして70歳を超えた今、工房横にそびえる木々の梢がゆっくりと風に揺れる姿を、ただボーと眺める時間が増えた。そして思うのだ「自分はこの時を手に入れるために人生を歩んできた」と。過去の思い出など歳と共に浄化され濁りは沈殿し、どんどん澄んでいく・・・。(将来、年を重ね抹茶をすすりながら昔語りでも。今まさにその只中にいる。勝田陶人舎・冨岡伸一)