いま世界的な現象として進んでいるのが格差社会の到来である。金持ちはより資産を積み上げ、貧乏人は加速度的にその貧困度合いを増している。日本の場合、その原因の一つにあるのが企業の利益配分である。特に大手の上場企業が企業努力により得た利益を、適切に従業員に還元できないシステムになってきているのだ。バブル崩壊で日本人が所有する株式が急落し売却した後、それを拾い集めたのが海外の投資家である。
その時以来、日本の上場企業の株主の多くが外国人に変わった。すると彼れらは「会社は株主の物である」と主張し、本来従業員に配分されるべき利益を、株主に支払うように要求した。そして株式の配当金の増額や、株主に有利な自社株買いに利益を回すように圧力をかけた。すると企業の経営者は彼らの主張を受け入れ、サラリーに回すべき資金を株主に支払うようになったのだ。日本人の給料が上がらなくなった主な原因はこの利益分配にある。
そして現在、給料が大きく上がらない状況に追い打ちをかけるように進んでいるのが、諸物価値上がりを伴う急激なインフレの進展である。「ええ、また値上げか!」半年前に1400円に値上げしばかりの千円床屋が、昨日行くと券売機の価格表示が1500円に変わっていた。このように最近の物価高には驚くばかりである。いよいよ私が数年前より警告していたインフレの進行による貧困は、これからが本番になる。
以前から指摘しているように、これから時代勤労者以上に経済的圧迫をうけるのが我々年金族である。いっぽう不動産やゴールド、株式などを多く所有する資本家は実物資産の値上がりで、その富がますます増大する。このようにしてリッチな一部の富裕層と多くの貧困層の格差は増々ひらいていく。だが不動産を買うには大金が必要で、株式投資は高齢者にはリスクが高い。そこでゴルード保有が最善であったが最近の値上がりで、ゴールドの新規買いも高嶺の花となった。
するともう一度見直したいのが「清貧の思想」である。日本人は古来より清く貧しくを実践して生きてきた民族である。普通人間は生活が困窮すると精神まで卑しくなる。ところが日本人は「詫び寂び」など華美でない精神文化をいろいろ生み出してきた。豊かさとは何も物質的な充足ばかりではない。一汁一菜でも精神的に豊かに暮らせば幸福感は得られると賢人はいう。(自分で焼いた茶碗に湯をそそぎゆっくりと味わ会う。天を仰ぎ人生これで良いのだと達観を気取る。でも貧乏は好きではない。勝田陶人舎・冨岡伸一)