「お前は焼いた生揚げは食べるな!」むかし生揚げの焼いたのが我が家の食卓に上がったことがあった。その時父親が私に言ったのが、「焼いた生揚げは確かに不味くはない。でもこんな安易なオカズ食べていると、男はそのレベルになってしまう、だから姉達はよいがお前は食べるな」ということだった。それと当時、明治生まれの父親によく諭された言葉が「武士は食わねど高楊枝」である。男は「多少空腹でも平然と楊枝をくわえて「いま食事は終えたばかりです」という態度でいろ。「安易に道理の無い施しなど受けるべきではない」と告げられていた。そのように教育された私は、おかげで若い頃は周囲の人から「なんて傲慢で可愛くない奴だ!」と思われたことも多々あったと思う。
現代でこのような教育が良いかどうかは分からない。でもある程度プライドやポリシーを持ち、自立して生きることも大切ではないのかと思う。私は週に4日、早朝出かけるが、いつも途中の通勤路で同じ光景に出くわす。ある一軒の家にフォーカスすると、その家庭では初老の女性がまず先に、玄関ドアーを開けて現れる。すると続いて靴を履き終えたばかりの中年息子が後から出てきて、母親が重そうに引き出した自転車に乗り、そのまま出勤する。母親は道路に出て後ろ姿を見送るが、この間2人はほとんど無言である。推察するとこの行動はもう40年もずっと変わらないのではないか?別に男が50歳近くまで結婚しないのも悪くない。でもいい年してあまりにも過保護でないかと感じるのである。
「うちの息子なぜ結婚しないのかしら?こういう親に限ってこの言葉を吐く!」息子など家からたたき出して、一人で生活させれば女性との縁も生まれる。母親が側にいて至れり尽くせりでは甘えて自活するわけ無い!たぶんこのタイプの母親は「・・ちゃん、夕飯には何食べたいの?とか聞いてわざわざ息子の好きな食事を作るに相違ないのだ」。簡単に焼いた生揚げでも食わせておけばそのうちいなくなる。でも不思議なのは「かあさん!みっともないから、もう見送るの止めてよ!」と何故息子が言わないのかなあ・・・?私の30代は両親の面倒見るために家を増築し、同居して扶養家族が五人もいた。おかげで仕事が頑張れた部分もある!いまの男は自分に負荷をかけない。家計も男女別々で半々の負担が多いと聞く。これでは女性も結婚するメリットも希薄になるし、簡単に離婚する。
家計全体を男が負担することが少なくなったのは、給料が上がらないからとする意見が多くある。本当にそうなのか?私は教育による男の気概の欠如だと思うのだが。(写真・これでも抹茶茶碗です。勝田陶人舎・冨岡伸一)