戦後、経済成長とともに洋酒に押されてきた日本酒も近年、少しずつ復活しつつあるようである。
燗酒として呑まれてきた日本酒は、かっておもに伏見や灘の大手蔵元で作られてきた酒が主流であった。しかし冷酒として飲まれるようになると、お米と水の良い越の寒梅、八海山などの新潟のお酒が好まれるようになってくる。米と水の良い新潟のお酒は冷で呑んでも甘さや舌に残る粘っこさが無く、全体にあっさりしている。特に上善如水はその名のとうりさらっとして呑みやすく、一時私もこのお酒を愛飲していた。
しかし日本人の嗜好の変化が広く認識されてくると、大手蔵元の白鶴、黄桜、日本盛りなどでも、これらのテイストに対応したお酒が作られるようになってきている。また海外で日本酒が呑まれ始めると、ワイン感覚で楽しめるお酒が好まれ、ワイングラスで日本酒を楽しむ機会も多くなってきたようだ。
数年前には海外で名を上げたダツサイなど、山口の小さな蔵元のお酒も話題になり幻のお酒と呼ばれていたことがある。でも最近、工場増築により生産量が急にふえた。今ではどこの居酒屋などでも簡単に呑むことが出来るようになり、そのありがたみもだいぶ薄れてきたと思う。
このように変化してきた日本酒だが、たまには原点に帰り畳に熱燗も良いのではないだろうか。