茶飲み話・半泥子
私が陶芸を始めたのは40才になった頃である。当時は仕事も軌道に乗り一段落したので、自身の将来を見つめ一生できる趣味はないかと思案のすえ、選んだのが作陶であった。そして姉の紹介で師として門をたたいたのは、東大出で姉とおなじ市川美術界の役員であった延原拓二氏である。彼は通産省の役人を55才で退官した後、文献などを読み漁り、独学で陶芸家を目指した変り種である。
入門して数年たったある日、知人にユニークな陶芸家の個展が開催されているからと連れて行かれたのが、デパートの催事場で行なわれていた「川喜田半泥子」の抹茶碗個展である。それまで抹茶碗などにあまり興味ど抱かなかった私であったが、展示品を順番に見ていくうちに抹茶碗の奥深さに魅了され、「自身の晩年の課題はこれだ・・・!」
「川喜田半泥子」という人物は本名が久太夫政令といい、三重の豪商の家に生まれた実業家や政治家でもあった陶芸家である。仕事の傍らおもに抹茶碗を作り続け多くの名作を残している。そういう意味では元総理大臣の細川さんにプロセスが似ているので、たぶん細川さんが半泥子からインスピレーションを受けてのことではないかと、勝手に推測している。
「冨岡さん抹茶碗というものは、その人の人格の反映なんです」とは私の師匠の言葉であった。「すると何かい?凡人は抹茶碗など触るなということですか!」と返したくなったが、この歳になるとその意味が分かるような気がするのだ。抹茶碗作りは若い頃からの専業でやるよりも様々な人生経験をし、心根を磨いたほうが味わい深い作品が生まれる可能性もある。
私の師匠も半泥子も細川さんも、みなさん専業の陶芸家ではない。そこで私もその末席に加わりたいと思うのだが、彼らと比べるといささかコンパクトであるのはいたしかたない。すでに年齢的にはとっくに盛りを過ぎ、今さらその領域を広げるわけにもいかない。(最近ではまた原点に立ち返りオーソドックスな茶碗をひねっている。何が良いのか、悪いのか?知らぬ存ぜぬ!で人生楽しんでいる。勝田陶人舎・冨岡伸一)
ジェイソン
茶飲み話・ジェイソン
「厚切りジェイソン、ネットでフルボッコ!」という記事を見た。なんでもあのお笑いタレントで「ホワイ、ジャパニーズピープル」と切り込むジェイソンさんが昨年出版した投資本に批判が殺到しているそうだ。その時ジェイソンさんは値上がりを続ける米国株投資信託VTIを日本人に進め、それに乗った人が多くいたらしい。
ところがその時を境に米株は下がり続け、現在では損失を抱えている人がかなりいるという。そこでネットでスレがたち騒動になった。人に投資を薦めるのは本当に難しい。自分が投資で儲かり他人にも進めたときは、多くの場合その時が頂点でそこから下落する。かといって値が下がりをして見向きもされない投資対象を、人に勧めるわけにも行かない。
「日本人は本当にお金や投資の話をしませんね!」アメリカでは自宅に芝刈りに来る庭師が銀行に勤める家主に、「これからアップル株は上がるのだろうか?」などと普通に聞いてくるという。私も若いころヨーロッパにはよくでかけたが、ホテルで朝食をとると隣の席に座るアメリカ人に笑顔で「今日ダウ平均200ドルも上昇したね」などと挨拶代わりに話しかけられたこともある。
その時の印象では「この人たちは挨拶代わりに株の話を初対面の人とするんだ」とカルチャーショックをおぼえたことがある。私も金融、経済の話は嫌いではないが、初対面の人に挨拶代わりに「日経平均上がりましたね」などと今だに言ったことはない。株式投資など日本人にとっては影でこそこそするもので、口外しないのが常である。
参議院選も近づいたが争点は「日本人は昔のように一億総中流!豊かになるのはどうすべきか?」だと思うが、お金に執着しない美意識を持つ日本人庶民が全体的に豊かになる術などないのでは?お金にこだわる一部の金持ちは益々富み、金融に無関心な庶民は貧困にあえぐ。(投資でも汗水たらして働いても、苦労だけで儲からない時代になった。勝田陶人舎・冨岡伸一)
ビットコイン
茶飲み話・ビットコイン
いま世界ではビットコイン急落中というニュースが話題になっている。先日まで500万円位していた価格があっという間に半分になってしまった。でも日本人の多くはビットコインなど所有してないので、ほとんどの人が感知しない。しかし隣の韓国では先ごろまでビットコインの投資がブームがあったため、大損する人が続出しているかも?
そもそも適正価格など存在しないビットコインは過去にも大暴騰、大暴落を数度繰り返してきた。働かないで富を手に入れるには、ビットコインへの投資が一番近道であるとされていた。年初には650万円まで価格が上昇し、1000万円まで上がるという投資家も多くいたが、実際にはまったく逆の100万まで下落する可能性もあるらしい。
でも今後未来を見つめると、ビットコインに代表されるデジタル通貨は、大きく成長するポテンシャルを持っている。なぜならメタバースなどバーチャル・リアリティーの拡大は科学技術の爆速と共にもうそこまで来ているのだ。われわれがウクライナ問題などに気をとられている間に、世界はとんでもない方向へと進んでいく。
十年前までスマホなど必要としなかった私も、今ではほとんど肌身離さずスマホを携えている。しかしこれから10年後にはVRの眼鏡をかけ、マトリックスやっている自分など想像できない・・・。先進国だと思っていた日本は年々デジタル後進国になっている。そこで一部優秀な若者はシンガポールやドバイなどに新しい仕事を求めて転居する。
そもそも2008年にブロックチェーン技術を用いて、ビットコインを開発者した人物はサトシ・ナカモトという名の日本人だといわれている。このころの日本はまだこの分野でも先端を走っていたが、いまでは大分遅れを取った。日本は物価が安く、食べ物がうまい安全で住みやすい国!でも年寄りばかりという近未来が待っているにか?(先端技術立国日本など、昔語りになるのは寂しい。勝田陶人舎・冨岡伸一)
円安
茶飲み話・円安
「円安24年ぶりに135円前半」との見出しが紙面におどる。これはえらいこっちゃですね!これだけ急速に円安が進むと、これからあらゆる商品が値上がりし、年金生活者の家計にしわよせが来る。数年前に対ドル105円であった時からすると日本円の価値は三割も目減りしているのだ。この間日本はデフレであったため、まだインフレの実感はあまりないがこれからは大変になる。
まずいことに今後もっと円安が進み、150円位になるというありがたくない予想もある。実際そこまで円安が進むかどうかは分からないが、もしそうなれば海外旅行など高嶺の花になる。現在でもアメリカでカフェに入り、プレートランチをたのむと3千円も取られるというので、滞在費もばかにならない。
しかし以前は円安になると、トヨタなどの自動車やパナソニックなど家電企業が恩恵を受け日本経済が活況になったが、今ではその多くが海外に工場を移し空洞化したため、円安のメリットはほとんど無い。でも観光業はべつだ。訪日外国人にとっては旅費や滞在費が劇的に安いので、コロナが収束すれば多くの外国人が日本にやって来る。
たかだか30年以上前を思い出し見ると当時は円高で、多くの日本人が海外に出かけ、ブランド品などを買いまくり、傍若無人なその態度に現地人からも批判の声があがっていた。今度はあれと逆バージョンになる。マナーの悪い外国人で観光地は荒らされ、日本人は隅っこに追いやられる可能性もある。
「フジヤマ、ラーメン、ゲイシャガール!」これからの日本を展望すれば富士山に代表される観光地と、ラーメンなどの飲食、それとオモテナシの日本女性がキーになるかも・・・?観光と飲食はまだ良いとしても女性はねえ。貧困化するニートや母子家庭を国はもっと支援しなければ、外国人目当てにニーズの増える夜の仕事につく人も多くなる。(国力が衰え通貨円が安くなると日本は荒廃に向かうという予感。勝田陶人舎・冨岡伸一)
林マリ子
茶飲み話・林マリ子
「すいません、写真撮らせてください」といきなりフッション誌カメラマンに呼び止められる。1980年代話題になっていたファッションスポット代官山・ヒルサイドテラスで新しく開店したブランドショップ街を散策中・・・。その時は好きなデザイナーブランド・ニコルの細かい濃茶ヘリンボーンのワイドパンツに、海老茶色の同じくニコルのハーフコートを着込み闊歩していた。
1980年代といえば日本が一番輝いていた時代だと思う。その頃の私は婦人靴のブランドデザインナーをしていた関係で、トレンドに敏感なファッション人間である。当時は今のIT産業のようにファッション産業が時代を牽引し、一攫千金でリッチになるにはアパレルの会社を立ち上げたり、デザイナーになって成功することがもっとも近道であった。
この頃にファッション業界で話題になった本が、林マリ子「ルンルン、買っておうちに帰ろう」である。まだバブル崩壊前で、若い女性達が高額海外ブランド品などを買いまくり、浪費することが社会現象にもなっていた。彼女はそれら金満なトレンドを一冊の本にまとめ、流行作家としてデビューをはたした。同時期に田中康夫のこだわりライフスタイル本「なんとなくクリスタル」も出版され話題となる。
「やっとわが母校、日本大学にも民主化の波がやってくる」先日テレビニュースで、その林マリ子さんが日大の理事長に就任することが決まった。日本大学の本部組織は私が在学中の半世紀以前から、経営トップは右翼闇組織や一部政治家とつながり、大学運営資金を私物化していた。私が在学中にも古田会頭による使途不明金事件が発生し、それに怒った学生達が立ち上がり大規模な運動を展開したが、機動隊の催涙弾により鎮圧された。
今では考えられないが50年以前の日本では、現在の香港民主化デモに対する警察機動隊のような弾圧行為が普通に行なわれていたのだ。それに対するわれわれは道路の敷石を剥がし割って投石用の礫とした。後輩のテリー伊藤はその石が目に当たり、斜視になったと当時を振り返っている。(林マリ子さん頑張って!今こそ時代遅れな男の権力構造を根こそぎ変てください。勝田陶人舎・冨岡伸一)