茶飲み話・慎太郎

先日もと東京都知事であった石原慎太郎さんがお亡くなりになった。慎太郎さんはご存知のように戦後、小説「太陽の季節」で作家デェビューをし、その後日本の行く末を案じて政治家に転進してた。都知事時代にはオリンピック招致に尽力し、開催にこぎつけたがコロナの蔓延で一年順延となり、なおかつ無観客開催では盛り上がりにも欠いた。

そして現在、昨年に続き冬季北京五輪が行なわれていたが、同じくまだコロナ禍なので、出がらしのお茶をいただくような、何かすっきりとしない飲み口になっている。また後味の悪さの原因の一つに、近年オリンピック組織委員会の運営が一部の国や人々に私物化され、利権や賄賂の温床になっている点もある。もっと透明で簡素な運営に変えないと、人心はオリンピックから離れて行く。

話題をもどすと石原慎太郎さんには、あの国民的アイドルであった弟の裕次郎さんがいた。彼はまだ映画が絶頂期の頃、慎太郎さんのはからいで俳優デビューをし、当時としてはその大柄なルックスと人好きのする表情で絶大な人気をはくした。私が小学生の頃にはアクション映画といえば日活で、頻繁に公開される彼の新作映画はどこの映画館も、立ち見客でごったがえす程の盛況が続いた。

「裕ちゃん、サインして」と遠くから声をかけ、蕎麦屋の出前持ちの祐ちゃんを我々子供達がからかう。すると彼はまんざらでもない様子で軽く会釈をかえした。当時チマタでは石原裕次郎の歩き方からファッションまで真似をする若者が激増し、彼の着ていたアロハシャツは一大人気となった。私が子供の頃のアルバムにもアロハシャツを着て、笑顔でウクレレを抱えた写真一枚が残っている。

石原慎太郎といえば三島由紀夫と並ぶ憂国の作家でもあった。私は慎太郎の小説は太陽の季節しか読んだ記憶がないが、彼が傾倒した三島由紀夫は戦後日本文学の一番星である・・・。今ふと思い出す青春時代に読んだ小説一冊を選べば、それは毎年この季節になり降る雪の先に垣間見る、豊穣の海「春の雪」の幻影だ。(写真は抹茶碗型植木鉢です。勝田陶人舎・冨岡伸一)

 

茶飲み話・サラダ

「このシャキシャキ感、たまらないね!」とはコンビニで買うハムサンドですよ。つい最近まで、こんな新鮮レタスが挟まったサンドウィッチなど、食べた経験がない。また包装紙も、オニギリのように簡単に開封できグーである。誰が考えたのか?手を汚さずに食べられるのは有難い。こんな細やかな気遣い、日本人にしか出来ないと思う。

でもここでちょっと咀嚼を止め記憶をたどろう。そもそも日本人はいつ頃から、サラダなどの生野菜を口にするようになったのであろうか?すくなくても私が中高生ぐらいまでは、日常サラダを食べていた記憶などないのである。調べて見ると日本人が一般的にサラダを食するようになったのは、化学肥料が普及した1970年代になってからだという。

「いつか俺もセロリの丸かじり、やりてえな」小学生の頃、放映されていたアメリカのホームドラマ「うちのママは世界一」はいつも素敵なママの作る美味そうな料理が卓上に乗るので、垂涎の眼差しで見つめていた。ある時このドラマに登場する同年代、ジェフ少年の姉さんが美容によいのか?当時はまだ日本にはなじみがなかった手に握ったセロリの茎を、サクッと丸かじりする。「姉さんイカシテルじゃん!」でも私がそれを実現したのは大分あとの事である。

サラダといえばいま気にいっているのは、たまに行くサイゼリヤのシーザーサラダである。自家農園で栽培したパキパキの新鮮野菜が、サラダボールに山盛りで運ばれる。「これでいいんだよ、これで」と思わずニヤリ。一般的にレストランに入り、気に入らないのはサラダの盛りの少ないことだ。「葉っぱなど安いのだから、もっとサービスしろや!」

現在野菜など農産物、特に大豆やトウモロコシの価格が上昇している。そこにウクライナで戦闘が起これば、広い平地が続くこの地域は小麦の一大産地なので、小麦価格が暴騰するのだ。原油はすでに高騰し、電気ガス代や食料価格まで急騰すれば、いよいよ深刻なインフレがやってくるかも?(何が起こるかわからないので、とりあえずカップ麺や缶詰など日持ちのする食品の備蓄を心がけよう。勝田陶人舎・冨岡伸一)

 

 

 

 

 

 

 

茶飲み話・料理教室

先月あの料理研究家の柳原一成さんが群馬県の国道を走行中、側道に激突し亡くなったというニュースが飛び込んできた。一成さんは代々続く江戸懐石料理「金茶流」宗家の主人で、赤坂にある自宅教室で日本料理の指導をしておられた。今年79歳というので、長寿社会の現在では早死にといえなくもない。現在では息子さんが頑張って後をついでいるが、私の師匠でもある一成さんの突然の訃報にご冥福を祈りたい。

「絶対に男女間のもめ事などは慎んでくださいね」と入会の事務手続きを終えた一成さんの母君に、硬く念を押された。もう30年以上も前、この料理教室では男の生徒さんの在籍は認めていなかった。ところが一緒に料理を習う私の親友が「どうせなら、一流所に行こう」という発案で一成さんの知人を介し、裏から話をつけ入門許可を取り付けたのだ。「人をよく見てから言ってください。堅物な私にそんなことあるわけないでしょう」と苦笑した。

ところが私の親友はその後暫くすると「忙しくなったから」という口実で退席する。すると一人残った私は20人ほどの女性に圧倒されながら「借りてきた猫」状態で、遠慮がちに料理道の苦行を3年間行なうことになる。でも人生は面白い!このことがきっかけで「器」に興味を持ち陶芸を始めた。

でもこれからのデジタル社会における料理とは?最近考えることがよくある。このままメタバース仮想現実の空間が拡大し、人々がこの空間の中で長時間過ごすようになると、面倒なのがトイレと食事である。特に食事はいちいち現実に戻らずとも、仮想空間の中で済ませたらよい。そこでこれからの料理は宇宙食のようなチューブに入った流動食がよいかもね?

昭和時代チキンラーメンからはじまり現在インスタント食品主流となったように、次の時代は仮想食品が主流となるかも?でもいちばん可能性のあるのはサプリのような錠剤ですかね。メタバースの中の高級レストランに出向き、テーブルに置かれた和牛ステーキ見ながら、錠剤を口に放り込む。するとたっぷりな肉汁がジュワーと口に広がる・・・。(たった30年前、まだ趣味程度であった主夫の料理が今では常識!時代など爆速で変わって行く。勝田陶人舎・冨岡伸一)

 

 

茶飲み話・石油ストーブ

いよいよウクライナで戦闘がおこる気配が濃厚になって来た?先日アメリカのウクライナ大使館員が本国に退避したので、すでに一触即発状態であると思う。しかし現在は北京オリンピックが開催中で、習近平がロシアのプーチンと電話会談し、閉会式後まで戦闘をを先送りするよう要請したらしい。一方中国でもオリンピック終了後は、いよいよ台湾侵略を始める可能性もある。

ここでもしウクライナで戦争が起きれば、欧米はウクライナに武器援助やもしかして派兵などなどで、ウクライナに加担することになる。するとロシアは経済制裁を受ける報復として、ヨーロッパへ送る天然ガスのパイプラインのバルプを閉め、ガスの供給をやめる。その結果いまでも高騰を続ける燃料価格がより高くなるのだ。

「灯油、18リッター。2280円」と小型タンクローリーの拡声器から価格を知らせる声が聞こえる。「2280円かずいぶん高いよな。スタンドに直接出向けば、まだ1800円なのによう!」といつも流しでやってくる灯油売りの暴利に驚く。私は灯油の価格には敏感だ。陶芸ガマの焼成は多くの灯油を使用するので、直接経費にひびいてくる。かつて灯油の安い時にはリッター980円と記憶する。

ところでむかし石炭を粉にして固めた豆炭、タドン、練炭という燃料があった。これを知る人は今では古代魚シーラカンスか?まだ石油ストーブなど無かった子供の頃、朝起きるとまづ始める主婦の仕事は七輪に練炭を置き、火を起こすことであった。「そう思い出した!ミツウロコの練炭ですよ」。あれってまだあるんですかね?さっそくググってみると、ありましたよ。あんなものまだ売ってるんですね!一個200円ぐらいで・・・。

工房では今だに冬の寒い日にはエアコンと併用して、オイルファンヒーターでなく、昔の石油ストーブを使用している。ファンヒーターは床にこぼれる粘土クズを下から巻き上げ埃まみれになる。でも最初に石油ストーブが登場した当時、それまでの練炭火鉢に代わっての暖房は暖かく画期的であった。でも暫くすると布製の芯が焼き切れ、その交換に手間取る。(手についは灯油の臭いは、古き良き時代の記憶の宝庫でもある。勝田陶人舎・冨岡伸一)

茶飲み話・トウモロコシⅡ

「やっぱり、一抹の不安が脳裏をよぎる」。なにって、先日のフンガトンガ火山噴火ですよ!あれからネットでいろいろ検索すると、火山ガスの噴出量はやはり膨大で今年から数年にかけて、太陽光遮断による気温低下が起こる可能性があるらしい。するとこれからやって来るのは冷害による食料不足である。わが国はご存知のように食料自給率は40パーセントを切っていて、海外からの食料量輸入が滞ればその影響はかなり大きい。

もう30年前になるか?前回のフィリッピン・ピナツボ大噴火のときは、東北地方で冷害が起こりタイから米を緊急輸入したことがあった。しかしタイ米は日本人の味覚には不人気であまり消費されずに、残りは家畜の飼料などに消えた。「せっかくわが国の高級米を、困っている日本に送ったのに豚の餌か」と当時タイ人の善意を逆なでした。

「現在世界では、すでに食料不足に直面している」原因は中国による穀物の買占めである。多くの人口を抱える中国では、農地の宅地開発などにより食料自給率が年々低下する。そのためもし中国が台湾侵略などにより戦争が起きると、台湾に加担するアメリカやオーストラリアからの食料供給が止まる。そこで中国は有事にそなえて膨大な量の穀物備蓄を始めているのだ。最近の小麦やトウモロコシの急激な値上がりはこの影響もある。

以前にも書いたが、我が家には一本のトウモロコシの話が伝わる。それは私が生まれた終戦直後、母親から聞かされたまだ幼かった頃の話だ。敗戦により当時は多くの日本人が飢えに苦しんでいた。その惨状は都会ほど激しく、日々の食料確保は困難を極めた。そのため各家庭では庭や空き地に芋やトウモロコシを植えて、糧のたしにしていたのだ。我が家でも道路側面に数本のトウモロコシを植えたが収穫予定の前日、隣人にもがれて貴重な一本のトウモロコシが消えた。残念そうにその様子を語った時の母の顔・・・。

いまその頃の飢餓を知る日本人も毎年減少している。飽食の時代と呼ばれる現代「金を出せば食い物など何でも手に入る」と人々は考えている。しかしそれは違う。もし大飢饉が来て食糧不足になったら、自国民をさしおいて食料売ってくれる国はない。日本も自給率をもっと上げるべきだが、農業国でもあるアメリカが猛反対する。なぜなら自国の農業従事者が穀物が売れずに困るからだ。(国防も食料も、アメリカに委ねれば安泰なのか?勝田陶人舎・冨岡伸一)

 

 

 

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