茶飲み話・火星人

「ホラ、伸ちゃん怖いよ。怖いよ!」と突然姉達から人体骸骨の挿絵を見せられた。まだ幼児だった私はその絵に驚き泣いて逃げ廻る。それ以来私は骸骨がすっかりトラウマになってしまった。そして小学校に上がると、当時学校には簡単な実験などをするための理科室があり、そこにはビーカーやフラスコなどの道具類などと一緒に、私が大嫌いな骸骨の模型が置いてあった。そこで私は低学年の間はなるべく廊下越しに覗ける、理科室の前は通らないようにしていた。

私が姉達に見せられた「怖い挿絵」は赤い表紙の百貨事典の1ページで、そこには骸骨の絵のほかに空想の火星人のイラストも挿入されていた。これはイギリス人の作家ウェルズが「宇宙戦争」というSF小説を書いた文章の途中に掲載された絵で、当時話題になったことから広く一般にも認知された。その頃はまだ火星の事などほとんど解明されておらず、タコに似た人間が実在すると信じられていて、子供達の好奇心を誘う。もちろんまだ人工衛星すら飛んでおらず、空を眺めては宇宙人の実在などを夢想した。

そして70年近くも経過すると「いよいよ我々も宇宙旅行が夢じゃないらしい」。先日あの俳優で実業家でもあるリチャード・ブランソンが経営する、バージン・ギャラクティックという宇宙開発会社が、飛行機型のロケットにブランソンと関係者4,5人を乗せ、大気圏外に出て無重力を経験し無事に帰還した。事前に何の訓練もせず、観光客気分で搭乗できるらしい。

このほかアマゾンの創業者ジェフ・ベゾスも宇宙ビジネスに専念するために、自ら経営するアマゾンを最近後継にゆずった。そして電気自動車テスラモーターのイーロン・マスクも稼いだ金をロケット開発につぎ込む。日本ではあのホリエモンが宇宙開発に積極的で、ロケット発射実験などを行なっている。このように先端産業で成功した経営者がこぞって、宇宙ビジネスに邁進しているのだ。

またゾゾ・タンウンの創業者前澤氏は年末にロシアのソユーズロケットに乗り、国際宇宙船に10日程滞在するらしい。この旅費には約98億円必要というので、宇宙旅行も今はまだ高嶺の花である。しかしイーロン・マスクが開発に成功したスペース・エックスを使用すれば、もっと安価に宇宙旅行が出来るようになる。いずれにしても民間人の宇宙旅行実現までもう間近である。

(地球は青かったと初めての宇宙飛行士ガガーリンは述べた。茶碗ならこんな感じかな?勝田陶人舎・冨岡伸一)

 

茶飲み話・年金

皆さんはGPIF・年金積立金管理運用独立法人という行政法人ご存知だろうか?この組織は簡単言うと我々の年金を預かり管理運用する組織である。先日ここが昨年20年度の運用実績を発表したが、私はその結果に驚いた。なんと昨年の運用実績が37兆円、25パーセントも増えていたのだ。そしてその額は累計で186兆円にも膨れ上がった。昨年コロナショック時には年度の運用益が一時マイナスになり、将来の年金が減額するのではと話題になったが、これでとりあえず年金減額の話は消えたと思う。

でもその総額の半分が日本と海外の株式に投資されていて、株式市場では現在世界最大のファンドになっている。そのため株価が上がれば年金は安泰、下がれば減額の「丁半博打」構図になっている。日本人の大半は株式投資などのリスク資産を警戒し、利子のつかない預貯金に励むが「国は個人より賢い」しっかり将来を見つめリスク運用している。もし年金機構が債権と現金の安全資産で資金管理すれば、じきに年金の原資は枯渇するので、これ以外の選択肢はない。そこで我々の「虎の子」も株価の上下に託されており、年金受給金額もギャンブルの要素を持つ。

肩を落とし下目線で20分ほどの距離を、トボトボ駅に向かう人の群れ。私の住む市川市には中山法華経寺という日蓮宗のお寺があるが、その参道に並行する位置に通る道路を通称「オケラ街道」と呼んでいた。この道路の上手には中山競馬場があり、持ち金すべてを負けた人(オケラ)たちがバスにも乗れず、歩く裏道でこの名がついた。でも最近ではこのオケラ街道の名も消えている。つまらないことに今の日本人はスマートで、持ち金ぜんぶギャンブルにつぎ込むこともないようだ。

先日ビットコイン・仮想通貨が短期で半値になると韓国では大騒ぎになった。多くの若者達が借金までしてビットコインを買い漁り、その下落で借金地獄に陥っているらしい。乱高下の激しい仮想通貨に手を出し、負けると元金を返せとわめき散らし集団でデモまでする。ビットコインは上下変動が激しく、ギャンブルであると当然認識して購入しているはずで、これでは競馬に負けて金返せと怒鳴るのと同じだ。

もう数年先にはドルや円も現金紙幣からクリプト・暗号通貨に変わるかも?中国では早くもデジタル人民元の発行が準備され、ビットコインのマイニングが禁止になった。わが国でも早晩現金のなくなる日が来る。すると全ての金の移動はデジタル化された数字のやり取りになり、あの誰でも好きな新札束の「香しいインクの臭い」ともおさらばになる・・・。実感のわかない数字だけのデジタル通貨など信用できないと思う方は、田中貴金属でコツコツ・ゴールド投資でもどうぞ。でもこの先儲かるかは知りません。

(海底に潜むヒラメ、油断するといきなりパクリとやられる。勝田陶人舎・冨岡伸一)

 

 

 

 

 

茶飲み話・未来列車

「ガッタンと音を立て列車は発車ベルなど、合図のないままに静かに走り始めた」すると列車の前面を写真に撮ると、ホームに下りた同行の女性一人が乗り遅れる。彼女は血相を変えてホームを駆け追うも、列車との距離はみるみる離れていった。「だから注意したでしょう。イタリアの列車は時間も正確でなく、警告無しに突然走り出すって・・・」(35年前のミラノ駅での話、詳細は以前「列車」というブログに書いたので省略する)

いまコンピューターの演算速度は加速度的に向上している。そして開発中の次世代「量子コンピューター」が広く使われ始める10年後には、全ての生活環境が激変する未来が到来するのだ。「早く皆さんご乗車ください!」としきりにアナウンスが流れるが、大半の人の耳には届かずにホームにただ佇んで、雑談などをして過ごしている。でもこの列車には乗らずとも別に何のお咎めもない。過去の記憶の中で天空を眺め、静かに田舎暮らしするのも選択肢の一つなのだ・・・。

もしあなたが「行き先の分からないこの銀河鉄道・未来列車」に乗車希望なら別に料金はいらない。ただこの切符を手にするには「好奇心、探究心、向上心」などの日常に流されない三つの誓約が必要だ。シルバー世代だからといって努力なしで、すわり心地のよい「優先席の用意」はないのでご注意を・・・!私自身も乗車を迷っていたが、この先にもう地上駅はないと聞くので飛び乗ることにした。

そしてこの列車に乗ったからといって安住は出来ない。列車は加速度的にスピードを上げていくので努力を怠るとすぐに振り落とされる。でも最近ではネットに全て情報が集約されているので、ググれば(ググるとはグーグル検索をいう)何でも瞬時に検索できる。こうなると知識よりも各自の思考力やインスピレーションが、アイデンティティーの鍵となる。

「やはりグーグルは凄いね」すでに初期の量子コンピューターを製作し希望があれば、それにアクセスできる状態であるらしい。するとこれからもずっとアンドロイドのお世話になり続けるのだろう。むかし経営の神様といわれた松下幸之助のグローバル優良会社・松下電器が、その後パナソニックと社名を変えると、時代に乗れないオワコン会社になった。若者達から未来に対するベェンチャー精神が消えた時、日本はパナソニックの二の舞いになると思う。

(お茶碗の中を覗くとまるで隣の銀河、アンドロメダ星雲のようだ!勝田陶人舎・冨岡伸一)

茶飲み話・ワクチン

私のブログは自身の視点で過去を振り返り現在との比較、あるいは現在を基準に将来の推測や対応などをテーマとしている。団塊世代も現役を引退し脇役に追いやられると、世の中に対する興味もうすれ、世代としても発信力がだんだん弱まってきた。最近では今と全く異なる戦後の混乱期など語る人もまれだ。そのためそれらの記憶を残す意味でも、私はあえて文中に子供の頃の事象などを書き込むことにしている。

先日も国府台のスポーツセンターで行なわれたワクチン注射を待つ間に、児童であった頃の記憶を手繰り寄せてみた・・・。「おーい、みんな集まれ!」とそれぞれが勝手に遊んでいる子供達に声をかけた。「さあこれから注射をするぞ」と拾ってきた松の枝の葉を一本抜き取り、年下のA君の腕にちくりと刺す。すると「痛てえ」の声に皆は即座に逃げ出した。私は松葉を指で挟んで追い回すも、すぐに松葉を抜き取った友達からも逆襲される。いつしかお互いに松葉で刺し合う混乱状態になっていた。

このように注射が遊びになるくらい様々な感染症に対する予防注射が、戦後の子供達の腕には頻繁に突き刺された。また当時の注射針は極太で非常に痛く、いまの注射針がソウ麺なら、安くて旨い丸亀ウドン位の太さがあった。また注射器も使いまわしで、針先を脱脂綿でかるく消毒するだけなので、最近保障問題になっている肝炎を移される危険をともなっていた。

ところで今回のコロナワクチン開発は緊急なので、人体での臨床試験も殆んど行なわれずに接種が始まったので不安もつきまとう。現在では新薬などの臨床試験は、コンピューターによるデーター解析で、ある程度シミュレーションできるようになっている。将来コンピュータの性能がもっと向上すると、ワクチンの効能などはより短期に分析できるようになる。すると新薬開発は劇的に早まり、多くの難病も克服されるだろう。

IPS細胞、遺伝子治療、高速コンピューターによる臨床など医学の進歩も留まるところを知らない。いよいよ人類は寿命180歳に向かって歩み始めている。65歳以上が高齢者という文言など早く消去しないと、人生のほとんどの時間が老後ということになってしまう。この先10年後には年金受給も徐々に繰り下がり、70代でもまだ働くはずだ。でもAIやロボットに作業を奪われる一般人は、働く意思はあっても「お前は必要ない」と邪魔にされるかもね?

(茶碗も接写すれば、微細な細胞のように粘土粒子の集合体である。勝田陶人舎・冨岡伸一)

 

茶飲み話・天気

「明日天気になーあれ!」と履いている下駄を天空に脱ぎ放つ。すると下駄は前後に回転しながら、コトンとひっくり返って落下した。「チクショウ、明日は雨か?せっかくの遠足なのによう」と落胆し、家に帰って照る照る坊主を軒下に吊るすことにした。私が小学校の低学年の頃までは日常まだ下駄を履いていた。ラジオから流れてくる天気予報などは「当たるも八卦」のへたな占い程度なので、下駄が表面だと晴れ、裏面だと雨、横向きだと雪などと決めて天気を予報した。

先日朝食の時間に「おかえり、モネ」という朝ドラを眺めていると、ヒロインのモネという女の子が気象予報士の試験に落ちるシーンが登場した。たかだか6,7年前の設定であるが、この頃は気象予報士の資格などまだ価値があったのか?と当時を思い返すと資格試験は登場したばかりで人気があり、お天気キャスターを務めていたタレント達の試験合否も話題になっていた。

ところが現在ではグーグル・プレイのお天気アプリを開けば、気象予報士の予測よりもっと正確な雨情報が町や分単位で確認できる。先日も「あと10分後に雨が降ってきますよ」と同行する娘婿に告げられると、正確に10分後に雨がパラパラと降り出してきた。全くグーグルは魔法のようで凄いね!これでは苦労して収得した気象予報士の資格など、あっという間にクズカゴの中に消えていく。

グーグルなどGAFAと呼ばれるアメリカの巨大プラットホームによる世の中の変革は、なかば暴力的にわれわれシニア世代にもその対応をせまる。この両刃の剣は敏感に対応すれば便利で満たされた幸福感を手にいれ、拒絶すれば世捨て人の群れの中に突き落とす・・・。さあシニアの皆さん!10年以上生きるつもりなら、覚悟はよいですか?常にパソコン使用とスマホの画面を指でタップ、スワイプ、フリック、ピンチアウトでの新鮮な情報収集ですよ。新聞などは届いた頃には古聞になっている。

私は長いことファッションを通して現状を分析し、次の流行予測することを仕事にして来たので、元来が新し物好きで変わり身は早いほうだと思う。そのため激変のエキサイティングな未来にも興味深々である。残りの人生も時代対応をあきらめず頑張って生きましょう。(梅雨に霞む遠く森のような青磁釉の茶碗。勝田陶人舎・冨岡伸一)

 

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