年金

「年金とは育てるものです!」これを聞いてすぐにピーンとくる人は少ないのではないか?「何やそれ、年金は国から受け取るものとちゃうんか?」と現代人なら誰でも思う。しかし我々の両親より前の世代では、年金は生んで育てるものであったのだ。ということは戦後年金制度が確立する以前、老人は代々自主的に各家庭でめんどうを見ていたのである。そのためどこの家庭でも自分達の老後を託す、後継者である男子を誕生させることが責務であった。「男の子が生まれたよ!」との産婆(敗戦の混乱期、子供も自宅で生んでいた)の声に私の父親は大喜び。「やっと四人目で男子が生まれた。これで俺達の老後は安泰だ」あとはこの男子を大きく育て高給取りにすればよい。実はこれ私と父親の関係でもあった。

「お前は長男だから、親のめんどうをみるのだよ!」と幼児の頃より言われ続けた私は32歳で両親と同居し、その後死ぬまで年金と老人ホームの役割を夫婦で担うことになる・・・。実は日本に国民皆年金制度が導入されたのは1961年とごく最近のことである。これにより親の扶養から解放された日本の家庭は、親との同居の強制がなくなり、どんどん核家族化が進み年金として男子を生む必要性も希薄になっていった。「子育てなど大変なだけで、子供を多く生むメリットはほとんどない、何かあれば国がめんどうを見てくれる」少子化の原因は国民皆年金にあるのではないかと私は思うのである。老後30年以上も国から年金を受け取れる。でもそんな金、借金大国の日本にあるのか?

親の扶養や介護の義務が家庭から国に移行しはじめて半世紀。でも近い将来国は財政難を理由にそれをまた家庭につき返すこともある。そのとき今の子は親の扶養などするのか?そこで重要なのが子供達の教育である。小学校で英語など教えている場合ではない。道徳教育こそ必要ではないのか?戦前の修身教科書を現代風にアレンジして復活させ、また親孝行や皇室の重要性などを説いてみたらどうだろう。それがだめなら安楽死法案(現代の合理的な姨捨山法)を通し、寝たきりの老人は自ら死を選択することが出来ようにするかである。「お前はアホか!」あのホリエモンの声がきこえる。これからAIロボットの時代になると、人々の労働や介護はロボットがするようになる。民衆は国からベーシックインカム(最低賃金)が支給され労働から解放!好きなことをすればよいと彼はいう。でもこんな夢物語、本当に実現する保証はない。

政府は百年生きるなら年金支給もそのうち崩壊するので、他に一億円必要ですと無責任に言ってみたらどうだ。2千万円貯蓄が必要というが年金がなければ、こんな額では足りるわけない。(勝田陶人舎・冨岡伸一)

捕鯨

梅雨空を見上げ、いつも通る静かな住宅街を歩いていてふと感じた。「そうえば最近子供達のピアノを弾く音色がほとんど聞こえてこない」私の住む町も高齢化が進み子供の数が少ないのか?それとも勉強やスマホゲームなどで忙しく、ピアノなど習う余裕などないのかは分からない。ただ公文など塾の先生によると最近の親達は、塾代などの支出には以前より敏感で、よりシビアーになってきているという。我々の世代では子供達が好むと好まざるとに関わらず、ピアノを買い与え教室に通わせていた。いやがる子供をピアノの前に座らせ、なかば半強制的にバイエルなどを弾かせる親も多くいたと思う。ところが今は夫婦共稼ぎで母親が昼間自宅にいないので、じっくりと子供のピアノ練習などに付き合う暇もなくなってきているようだ。

せんじつ子供食堂の運営に関する記事を新聞で読んだ。なんでもシニアのボランティアが、自治会室などに地域の子供たちを集めて食事を提供しているという。片親などが原因で貧困家庭も多く、三度の食事もろくに取れない子供も増えているらしい。まさかこの現代にと思うが統計によれば7軒に1軒は貧困家庭だともいう。平成の長く続いたデフレ時代に日本の国力は落ち、気がついてみたらあの鯨カツや鯨のベーコンを食べていた、貧しかった我々の子供の頃に逆戻りしているのではないのか?私は個人的には鯨のベーコンは好きだったが、学校給食に出た鯨カツはいただけなかった。肉が硬くていくら噛んでも噛み切れないので、脱脂粉乳と一緒に無理に飲み込んだ記憶がある。でも鯨カツと脱脂粉乳の相性は実に良い!敗戦国の完璧な組み合わせの学校給食ともいえた。

日本政府は来るべき貧困時代を察知してか?この6月30日に国際捕鯨委員会(IWC)から脱退して、今月1日からいよいよ31年ぶりに商業捕鯨を再開することになった。これから日本国は外貨がなくなり、牛肉を輸入できなくなると庶民はまた鯨肉を食うようになる。それを見込んで今のうちから捕鯨を再開しないと、食糧不足に対処できないと考えているのか?そうだとしたら政府は先見の明があり素晴らしい。でも捕鯨には海のない国々や牛食文化の欧米からの反発が強い。しかし余り鯨が増えすぎると大量に小魚などを食い荒らし、漁業資源の枯渇にもつながる。海洋国家であるわが国は海の生態系のバランスなども考える必要もあるのだ・・・。

「鯨は知能が高く可哀そうだ!それに聖書には牛は食べてよいが、鯨の記述はない」と反対者は言う。「バカヤロウ、砂漠で書かれた聖書に鯨の記述などあるわけねえだろう!」鯨のベーコンの値下がりを待ち望む。

(勝田陶人舎・冨岡伸一)

最近私の住む市川市の村越市長が公用車としてアメリカ製高級車、テスラを2台購入していた事がマスコミの報道により明らかになった。この車は電気自動車で価格は一千万円もする。実際にはリース契約だそうだが、税金のむだ使いであるとの批判を市民から浴びている。昨年行なわれた市長選挙では村越市長を初め三人が立候補したが、誰も規定の得票数には届かず再選挙の末、現在の村越市長がやっとの思いで当選した経緯がある。村越市長は私と同じ市川高校の出身なので、先輩のよしみで私は彼に一票を投じたのだが、「地元地主で坊ちゃん育ちの彼は、まさかこの程度の支出で批判されるとは思わなかったに相違ない!」環境問題を配慮して電気自動車の購入を選ぶなら、日本には三百万前後で買える日産リーフがある。

テスラのこの車は後部座席のドアーがガルウイング(カモメが翼を広げたように、ドアーが上に開く)という特徴がある。大きく開いた後部座席から若い市長が「ジャジャーン!」颯爽とおりたつ姿を思い浮かべると、まるでハリウッドスターのようでカッコ良い。でも自分の金で買うならともかく、税金での購入では目立てば目立つほど市民からの反感をかう。名古屋の河村市長などは公用車は軽自動車だという。こんな金銭感覚では予算管理配分など、この先税金の使われ方も気になるところだ!市川市はふるさと納税などの弊害で、数億円の減収だといい財政も厳しい。でもマスコミや世論を恐れて、ケチケチ節約して事なかれ主義のビジョンなし市長もいただけないのだが・・・。

ところで日本では発明王といえばアメリカ人のエジソンが有名だが、実は同時期エジソンも恐れたというニコラ・テスラという天才発明家がいた。物理学者でもある彼は交流電流、ラジオ、モーター、レントゲン、蛍光灯など現在でも使われているエジソンも及ばない実に多くの物を発明している。このテスラに傾倒し自社名をテスラに命名したのが、テスラモーター車の社長イーロン・マスクという人物である。彼はいわゆる典型的なベンチャー企業の経営者で非常に未来志向が強く、電気自動車をはじめ宇宙旅行など多方面に革新的ビジネスを展開し、世の中を劇的に変えようと努力している。電気自動車は構造が単純でガソリン車と違い、部品の数が四分の一ですむという。でもバッテリーの蓄電能力と耐久性にはまだいろいろ問題が残るようだ。

たぶん私の推測では村越市長はテスラの社長イーロン・マスクを尊敬し、彼にあやかりたいと思っているのではないか?市川市を未来型都市に変貌させるためのシンボルとして、テスラを買いましたと言ったらどうだろう?

(千葉県八千代市勝田台、勝田陶人舎・冨岡伸一)

 

 

アンポ

「安保、反対!アンポ、ハンタイ!なんでも、はんたい!」などと口々に叫び近所の子供たちが路地を練り歩く。立ち話のおばさん達がそれを見て苦笑い。ついに60年安保反対デモが、子供達の遊びにまでなった瞬間だった!当時テレビが庶民の家庭にも普及し始めると、夜のニュースでは国会議事堂周辺の緊迫感が何度も放映されていた。日米安保条約の改正に反対する全学連のデモ隊と警察機動隊が激しくぶつかる状況を見て「なんでそんな悪い条約を締結するのか?」私は子供心に思っていた。そのころはの日本は今と違って、多くの若者は社会主義国家に憧れ、我が国も早く資本主義のアメリカから離れるべきだ!という世論も強かった。しかし自民党岸首相の主導の基、なかば強引に60年安保は国会を通渇する。

そして半世紀以上も時が過ぎた現在その頃の記憶もうせ、60年安保のことなど誰も話題にしなくなった・・・。「日米安保条約など破棄することも考えるべきだ!」トランプ大統領が先日突然発言した。もともとはアメリカから押し付けられた感のあるこの条約であるが、確かに日本側に有利な不平等条約である。(日本が攻撃されたらアメリカは日本を守る。だがアメリカが攻撃されても自衛隊はアメリカと一緒に戦わなくてもよい)これはアメリカが日本を再軍備強化させないための戦略であったと思うが、もう60年以前の条約で今のアメリカには負担が大きいのも確かである。でもこの安保条約のおかげで戦後日本は国防にあまり金を使うことなく、日本のインフラ整備や経済発展に資金を集中することが出来たのだ。

私にはトランプ大統領の真意は分からない。でも自国を自ら守ることは国家としては当然のことである。戦争に負け無条件降伏をした日本は軍事面では手足をもぎ取られた状態が続いている。自衛隊という組織もあるが、もし在日米軍が引き上げたら邪悪な軍事大国に囲まれる日本など、簡単に領土をもぎ取られる。「中国、ロシア、朝鮮人も、相手は人間だ!話し合えば分かってもらえる、軍隊を持たない平和憲法を守りましょう。」という理想論を言う人がいる。でも彼ら国民の置かれている状況を見てほしい。人権や人間の尊厳は剥奪され何の批判もできず、ただ独裁者にひれ伏し忠誠を誓うだけだ。彼らの掟は喰うか喰われるかで殺伐としている!性善説でなりたつ日本人は、いつも相手の善意を期待する。でもこんな民族、世界広しと言えども大国では日本人しかいない。

そろそろ憲法9条を改正し、真の意味で独立国としての尊厳を取り戻す時期に来ているのかも知れない。トランプさんありがとう。(勝田陶人舎・冨岡伸一)

アンカレウドン

まだ今のロシアがソビエトと呼ばれていた頃、軍事機密の保持と防衛の理由でロシア上空を日本や欧米諸国の旅客機が飛べず、殆ど全ての航空会社のヨーロッパ便は、アラスカのアンカレッジを経由していた。しかしこの行程は時間がかかる。まず羽田からアンカレッジまで6時間。アンカレッジで給油のため飛行機を一度降り、ターミナルビルのロビーで3時間の休憩だ。再び飛行機に乗り込みヨーロッパの主要都市へは10時間、およそ20時間もかかった。でもまだ往きは気持ちが高揚しているので良いが帰りが困る。旅の疲れとエコノミークラスの狭い座席での長旅はもはや拷問に近く、やっとの思いでヨーロッパからアンカレッジにたどり着く頃にはもうヘトヘトだった。

「あれー、なんだこの懐かしい香りは?」眠い目をこすりアンカレッジ空港のロビーの長椅子に座り生アクビを繰り返すと、どこからか醤油らしき香り!立ち上がり臭いをたどると、去年まではなかった土産物屋の隣にうどん屋が開店していた。店内を覗くと駅蕎麦のようにどんを茹で上げている。でもメニューには月見うどんが十数ドルとえらく高い!「あと6時間我慢すればもっと美味いうどんが日本で食えるはずだ」と思いつつも日本人で賑わう店内に入る。しかし外国人はウドンなどに全く興味なく、遠くから不思議そうに眺めている。私は差し出された白い発砲スチロール碗の月見うどんに目を移し、それを2,3本を箸でつまみ啜ってみた。ふやけて腰のないネチネチウドンはだし汁もまずく、地元ホームの駅そば以下であった。

ところで先日近くのショッピングモールのフードコートに、買い物のついでに立ち寄った。見ると丸亀製麺の店頭だけが列を成す。若い人達も意外に多くいて人気があるようだ。ふだんウドンなど食べない私も、ためしに後尾についてみた。そして列が進み厨房で働くスタッフを見て驚く!忙しく働く人の殆んどが70以上に見えるおばあちゃん。その割には手際が良く活発に動く、「元気だなあー」動作に見とれた・・・。うながされて盆を手に素ウドンを頼むと、あとは好みで天ぷらをトッピングするのだという。先ずはカキアゲをとるが、「やばい、チクワの天ぷらが隣にあるあるぞ!」急に親父の顔が浮かんだ。子供の頃から我が家には禁止食材があった。焼いた生揚げ、チクワの天ぷらなどの幾つかだ。これらを食べると男の出世のさまたげになると父親はいっていた。安くて旨いのでそれで満足するようになるらしい。

最近ではラーメンに続きウドンも海外で大人気だという。この丸亀製麺もアメリカで店舗拡大中ときく。醤油の味と香りが世界中に広まった。この歳になるともう出世へのこだわりもない。次回はチクワの天ぷらをトッピングするか?

(勝田陶人舎・冨岡伸一)

 

 

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