手綱コンニャク

「こうやって、この穴に通すんだよ」とまだ小学生であった次女にやり方を教える。コンニャクを小袖くらいの大きさに切り、それを縦に等分し、その中央に切り込みをいれる。そしてその片側の辺を穴に通すと凄く小さな手綱コンニャクに変わる。小さいので数が多く一人では作業が大変、そこで娘にも手伝わせる。私はそのころ大晦日の前の二日間はキッチンに立ち、お節料理を自分で作っていた・・・。実は陶芸の器作りに役立つだろうと、当時赤坂の柳原料理教室に通っていて柳原一成さんから、近茶流江戸懐石料理の手ほどきを受けていた。そこで先生直伝の「お節料理」を自宅で練習のために、調味料量など記述されたノートを眺めながら料理作り励んだ。

そして元旦の朝に家族で食卓を囲むと「数の子は子宝に恵まれる、昆布巻きは喜コンブ、黄色は仏教では魔よけの色で、タイの僧侶の袈裟の色は黄色い。だから伊達巻や錦タマゴは魔よけの意味だ」と先生から聞いてきた通りに能書きを披露する。毎年必ず作ったのは昆布巻き、伊達巻、錦卵、手綱こんにゃく、田作り、くわい煮、栗きんとん、数の子などの10種類弱・・・。しかし最近では大変なので全く作らなくなった。それに20年ほど前から我が家でもそうだが、おせち料理は作るものから買うものへと変わってきた。有名な料理屋から町のすし屋まで、様々な所で販売するようになったので、事前にチラシを見て妻と検討するだけである。

中華風おせち、洋風おせちなどチラシもたくさん送られてくるので、今年はどこのおせちを頼むか迷うが、目安の基準は見た目で旨そうかどうかである。しかしこのお節料理もしょせんは飾り物で、家族も喜んで食べる分けではない。それに昨今のおせち料理は昔のようなゲンカツギの意味もないので、正月料理と名を変えたほうがよい。正月料理ならただ旨ければいい。和牛のローストビーフ、イベリコ豚、ホアグラ、キャビア、北京ダックにモッァレラチーズなど、世界中の高くて旨そうなものを集めてなんでも重箱に詰める。

旨ければいい正月料理、強ければ良い相撲、知らぬ間に少しずつ日本の伝統文化や精神が崩れていくのは残念だ。もう一度原点に戻り、それぞれの料理の意味や由来など、考え手作りしてみたい。(千葉県八千代市勝田台、勝田陶人舎)

 

 

 

© 2024 冨岡陶芸工房 勝田陶人舎