ヤミ米

「天高く馬肥ゆる秋」いよいよ暑かった今年の夏も終わり、本格的な秋に突入してきた。「食欲の秋」とも言い涼しい季節になると食も進み、注意しないと馬と同じで人も肥える。熟年になると体の代謝が悪くなるのか、太るのは簡単だが痩せるのは難しい。健康志向の現代、ダイエットと長寿食材のテレビ番組も多く放映されているが、基本的には好きなものが腹いっぱい食べられるのは、良い時代なのであろう!先日テレビを見ていたら今年も北朝鮮では盛大に独立記念日が開催された。いつもながらの一糸乱れぬマスゲームや軍事パレードは見事であるが、よく見ると兵士や道行く人はだれもスリム!貿易制裁などにより食料供給も滞りがちで一般兵士さえも常に空腹状態だという。空腹だと闘争心が増し兵士は強くなるという。

「なぜ皆しゃがんで電車を待っているのか?」幼児のころ不思議に思っていた。日本でも戦後暫くは食うや食わずで皆さん痩せこけていて、駅のホームでも大人達がしゃがみ込んでいるのをよく見かけた。体力温存というより常に空腹で、力が出ないらしかった。活発な子供がしゃがんで元気がなかったら世の中もう終わりだが。親は子供に食べせるために空腹を我慢していたのかもしれない。当時各家庭には、身分証明書代わりにもなっていた米穀通帳というものがあり、これを提示して判を押されないと米を買うことが出来ない。米は法律で厳しく管理され配給制で、お金があっても正規のルートでは割り当ての量以外は手に入らなかったのだ。「白米を腹いっぱい食いたい!」誰もが思っていた時代もあった。

当然すきっ腹を抱えた子沢山の家庭では米が常に足りない。すると不正規のルートで米を入手することになる。あるとき我が家に3歳くらいの女児の手を引いてカスリのモンペをはき、やつれた顔のオバサンが重いお米を担ぎ売りに来たことがある。母親と値段の交渉をしていたが、高いので我が家では買うのを止めた。すると重い米を担ぎ、またトボトボとダルそうに背中を向け帰っていったが、突然連れていた女の子が振り向きざまに「あっかんベー!」目じりを指で下げ舌を出した。「こんちくしょう!」と思ったが目をそらした。(通称このような不正規の米を「ヤミ米」といい自分達の食べる配給米か、どこかで手に入れた米を高く売り歩く人もいた。)

この悲しい親子がその後どうなったかは分からないが、いずれにしても明日の糧もままならない時代であった。

(千葉県八千代市勝田台、勝田陶人舎・冨岡伸一)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です