柿の種

「柿の種」と呼ばれるオカキがあるが、日本人なら知らない人はまずいない。私が子供の頃、当時はまだ乾燥剤もなかったので柿の種は湿気から守るために、蓋がしっかりと閉まるブリキ缶の中で保存されていた。この小さなオカキは、新潟にある浪速屋という米菓製造所で大正時代に作られたのが最初で、すでに百年の歴史があるらしい。しかしこの柿の種の形はある日偶然生まれたという。工場の作業員が丸い小さな抜き型を落とし、そのへこんだ金型で原料のシートを抜くと、形が柿の種そっくりだったという。なのでこのオカキを柿の種と名付けて販売したところ評判をよんで、その後も作り続けることになった。柿の種は私もよく食べるが以前より、唐辛子の量が少なく中の色も赤くない。かつては20粒も口に投げ込むと、「ヒー・ヒー」と辛くビールを飲んで一息ついていた。

柿の種といえばいろいろな童話を教訓にする私にとっては「サル・カニ合戦」が思い浮かぶ。ある日カニはオムスビ1個とサルが実を食べた後、捨てるつもりの柿の種とを交換する。そしてカニはその種を土に埋め水やりなどの世話をすると、十年後に柿木は大きく成長し沢山の実を結ぶ・・・。そのあとの物語の流れは皆さんよくご存知なので省略するが、要はいま食べている柿の実よりも種の方が、長い人生では大切であるということだ。しかしその種も土に埋めて育てなければ木に成長し、たくさんの実を付けることも無い。いま大多数の日本人を見ていると、皆さんセッセと貯蓄に励み金融資産を蓄えている。その金額は1800兆円もあるというので驚きだ。しかしこの大半が預貯金や債権では殆んど種の状態のままなので、大きく成長し実を結ぶこともない。

「残念なことに」というべきであるが、今我々が生活しているこの日本は資本主義社会である。しかし実際には、このことを正しく認識している日本人は意外と少ない。資本主義とは資本家や金持ちに有利な世の中である。豊かになりたいと思うなら、自らが会社を設立しオーナーになって金を稼ぐか!有望な会社に資金を投資し、その恩恵にあずかるかの二択しかない。ところが多くの日本人は、このことを意識せずなんとなく会社に勤め貯蓄に励む。一方アメリカでは創業ブームでアマゾンやアップルなどの巨大企業が誕生し、経済が活気付いている。人々は稼いだ金をどんどんと企業に投資し、その配当金や値上がり益などを手にする。お金は直ぐに食べられる「実」の要素と「種」の要素を持っている。日本人はお金は実だと思い貯金で蓄える。アメリカ人は種として投資に回し大きく育てる。

ベンチャーを嫌うようになった若者の多い、今の日本の風土で新たな創業なども少ない。すると庶民が豊かになる道はアメリカの成長企業に投資するしかないとしたら、日本の将来は暗い。

(写真は柿の葉を転写した皿。勝田陶人舎・冨岡伸一)

 

 

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