浅草浅草寺の仲見世裏通りに、一軒の手焼き煎餅屋がある。ここでは常時煎餅を店頭で焼いていて、一枚から販売している。外国人達には珍しさも手伝ってか、煎餅の一枚売りは人気がある。でも買っているのは主に観光客で一枚売りでは手間がかかるだけで、儲けになるかどうかは分からない。最近日本人は煎餅を日常食べる人が減っていて、街中での煎餅屋は殆んどが廃業した。今も残っている多くは、神社仏閣などがある門前町にある。人で賑わう仲見世通りを歩くと、レンタル貸しの和服を着て楽しんで歩く外国人を見うけるが、彼らは高い買い物はしないという。常に観光客で混雑するだけで食べ残しのゴミは捨てるし、掃除も大変だと浅草観光協会の担当者がこぼしていた。
「こりゃなんだ?」日本から持ってきた醤油味の煎餅を、以前イタリア人に日本のクッキーだと言い食べさせてみたことがあった。クッキーは甘いものだと頭から思っているので、食べた時のリアクションが面白い。多くの人は驚いて吐き出したりもする。「これ旨いね」と言って全部食べる人などまずいないなかった。醤油など塩味の菓子は欧米ではあまり見かけない、欧米人は日本人から比べると食域がかなり狭い。だいたい毎日同じものを食べているので、新しい味覚を受け入れる気持ちもなかったが、彼らも最近では和食を取り入れ始めた。我々が子供の頃は日本人も毎日同じ物を食べていた。ご飯、お新香、味噌汁、魚の干物などである。でもこれは食域が狭いというより、食材が殆んどなかったと言うべきである。
煎餅やオカキなどの甘くないお菓子がこれほど沢山ある日本は、世界でも珍しいと思う。どこの国でもお菓子は甘いのが一般的で、まして子供のおやつ等ではなおさらだ。日本でも子供がおやつに煎餅を食べなくなってから久しい。その代わりにオカキの種類はずっと増えた。食べやすい大きさのオカキは一個ずつ包装されていて、手に取りやすいのもよい。最近私もビールのつまみにオカキを食べることがある。オカキは砂糖の糖分がなく、ダイエット効果があるのではないかと単純に思うが、体の中でデンプンを糖分に変えたら、結局は同じことなのかもしれない。煎餅は食べなくなったが、オカキとして日本人の味覚にしっかり継承されると良いと思う。
煎餅を入れるなら写真のこの器でしょうか。
(千葉県八千代市勝田台、勝田陶人舎)