ウナギ
「おう!なんだあの魚」5センチほどの透明で細く長い魚が、海のほうから川の流れに逆らってクネクネ泳ぎ上流に向かう。「ウナギの稚魚か?」すくい取とろうと試みるが、持参した玉網では目が粗く通り抜ける。私が中学生の頃、まだほとんどが湿地だった市川の真間川河口で釣りをしていると、垂らした釣り糸の前後をウナギの稚魚が泳ぎ通った。当時真間川やその周辺の沼にはまだウナギがたくさん生息していた。東京湾岸が埋め立てられる以前で、いまの東西線原木駅の先は直ぐ遠浅の海で、周辺は高い葦が生い茂る泥沼地や蓮田だった。民家は遠く見える程度しかなく、人影などもほとんど無いかった!
よくこの周辺には釣りに来たが、飽きるとその沼地に分け入り誰が仕掛けたか分からぬ、地元ではポーポーと呼ばれていた竹の節をくり貫いた、ウナギの仕掛けを上げに行く。「どうせこんな沼、誰の所有者かも分からないし、俺達には関係ない」と勝手に判断し50センチ位の水底に沈められた、70センチ位の竹を三本に束ねた竹筒を両手の指で出口を塞ぎ水中から引き上げる。すると「入っているかも」の手の感触を感じ友だちが差し出す玉網の中に水ごとあける。「おーいたいた。いっぺんに2匹取れたぞ!」もう大はしゃぎである。当時こうして取ったウナギは、街のウナギ屋に持ち込むと一匹50円で引き取ってくれた。小遣いに困ると、たまに友だちとウナギバイトに出かけた。
今年の春先にはウナギの稚魚が全く不漁で、このままではウナギが高騰するかもというニュースが流れた。しかし非常に心配されたウナギ稚魚の捕獲も、その後一転豊漁となりウナギ好きにはひと安心である。先日テレビを見ていたら夜の暗い海辺で、懐中電灯を照らしウナギの稚魚を取る大勢の人々が放映されていた。一応役所の認可が必要だというのだが、目の細かい玉網で水面をすくうと数匹のウナギの稚魚が取れる。一匹いくらで売れるのか知らぬが、一晩で10万、20万の大金を稼ぐ人もいるとかで、今の時代も俺らがやったウナギバイトがまだ続いているのかと非常に驚いた。浜松を新幹線で通過すると浜名湖周辺にはウナギの養殖池が点在するが、ウナギの稚魚不足からほとんどの池は空で、むかしの活気のあった面影はない。
ウナギは蒲焼でなく白焼きもうまい!だがウナギ不足から閉店する店も多い。(千葉県八千代市勝田台、勝田陶人舎・冨岡伸一)