山椒
工房のお隣さんの庭に何年か前まで山椒の木が一本植わっていたが、ある時突然枯れた。原因は分からないが、山椒の木はなぜか突然枯れることが多いらしい。しかしその木から山椒の実が庭に落ち、小さな実生の木として工房のあちこちで新たに芽を吹いている。山椒はミカンと同じ柑橘類なので、植えてから実を結ぶまで年数がかかる。青虫に食べられることも多く、ほとんどが実をつける前に枯れる。ところでスパイスとしての山椒と、日本人との関わりは非常に古く縄文時代の貝塚からも、山椒の実が貝殻と一緒に出土するという。古来より縄文人も土器に貝や魚などを入れ煮炊きし、薬味に山椒を使用していたのであろううか?
「山椒は小粒でぴりりと辛い」とは体が小さくても才能や力量にあふれ、侮れないと言う意味である。この諺どおり山椒の実は少量でも脂肪分の多い料理に入れると、そのスパイスとしての本来の役割と共に、薬効として新陳代謝を高める働きがある。病気に対する免疫力アップや胃もたれ、冷え性の改善などいろいろな効果が期待できるという。私も山椒の粉を焼き鳥や牛肉料理にも振りかけて使うが、唐辛子より辛味も上品で香りも良く料理の質を高める。「それは驚き、桃の木、山椒の木だねー!」などと驚いたときに昔はよく使ったが、最近ではこの言葉も余り聞かなくなった。この言葉は地口といい語呂あわせで特に深い意味は無いと言う!「それは驚き、桃の木、山椒の木。ブリキ、タヌキにガンモドキ」などと、かってにあとに続けることができるという・・・。
「それは驚き、桃の木、山椒の木。ヒノキにスギノキ、花粉の木」だよな私なら。毎年春になると多くの人が花粉に悩まされる。戦前に杉の木がたくさん植えられた日本の山々は、そのご杉は木材として利用されずにほったらかしになった。(お山の杉の子の歌を歌って、戦前に皆で一生懸命お国のためにと植えた杉の子は、70年経過して大きくなったら全くの疫病神)当時の人々が後世のためにと、汗水たらし頑張った自分達の行為が、その子孫には迷惑千万である。もし彼らが聞いたら「これは驚き、桃の木、山椒の木だね」いま日本の林業は衰退し崩壊寸前になっている。熱帯雨林の伐採をともなう洋材の輸入などをやめて、日本の杉材を伐採しパルプとしての使用を高めれば、花粉症に悩む人も減ると思う。
少し変わった写真の植木鉢を作り、実生の山椒の苗を移植してみた。(千葉県八千代市勝田台、勝田陶人舎・冨岡伸一)