サイダー
一年ほど前から早朝工房に出かける時には、必ずコンビニで炭酸水を買っていくようになった。テレビで炭酸水は水よりも体に良いらしいと聞き、それからはいつも炭酸水を飲んでいる。我々の世代と炭酸飲料の出会いは、あの奇妙なビンに入ったラムネか三ツ矢サイダーである。三ツ矢サイダーの歴史は古く、明治時代に兵庫県の鉱泉炭酸水をビンに詰めて販売したのが始まりだという。両親の世代からも馴染があって、我々の子供の頃は夏場お客さんが来宅すると、酒屋に冷たい三ツ矢サイダーの買い物を頼まれた。いそいで家に帰り栓を開けグラスに注ぐと少し残る。それを駄賃代わりに母親からもらいラッパ飲み。なんだかこの時すでに酒飲みになる予感がした。
三ツ矢サイダーはまだコカコーラが発売される以前、真夏の夜にウチワで煽ぎながら見る巨人軍のナイター中継の合い間に、頻繁にコマーシャルが流れていた。その度に喉の渇きを憶え、「なにか冷たい飲み物ないの?」ときくも、三ツ矢サイダーは高いので自宅にはあるわけない。しかしこの頃、とんでもなく画期的な炭酸飲料が発売されえた。その名も「ソーダラップ」ジュースの素と同じくこの粉末は一杯分の小袋入りで十円。これなら手が届く!冷たい氷水のグラスにこれを開けると、「シュワー!」と泡立ち即ソーダー水が出来上がる。メロンソーダのようなグリーン色のソーダー水は、安いので夏場にはいつもこれを飲んでいた。
「こんなに甘かったっけなあ!これではとても一缶飲めない。」最近自販機で缶入りの三ツ矢サイダーを買って飲んだら、ずいぶん甘く感じた。たぶんサイダーの糖度は変わっていないが、私の味覚が変わったのだろうか?いつも炭酸水を飲んでいるので、甘さが際立つ!でも三ツ矢サイダーに限らずコーラもファンタもみな甘い。昔の飲料水は甘くないと売れなかったのか?でも当時はこの日本でまさかペットボトルの天然水が、百円で売れるとは思わなかった。むかしアメリカの要人が日本人は水と安全は只だと思っていると発言したが、今は飲料水も安全もしっかりとコストが掛っている。
そのころ我が家の冷蔵庫は木製だった。これに夏場毎日氷屋が来て2貫ほど氷を詰め込む。この氷をブッカいてグラスの中に移し冷水にしていた。
(千葉県八千代市勝田台、勝田陶人舎・冨岡伸一)