サトウキビ

先日スーパーマーケットの果物売り場で、黒い竹のような食用のサトウキビを見かけた。日本でサトウキビの茎などわざわざ買ってかじる人などいるのか?疑問に思ったが販売しているところをみると、多少は売れるのであろうか・・・。「あれ、ちょっと車止めて!」思わず運転手に合図。以前台湾出張のおり、台中から郊外の靴工場へ向かう途中、道端で50センチぐらいに切られた竹のような棒が屋台に並んでいるが目に入る。興味津々車を降り近づいて見るとやはりサトウキビだった。話には聞いていたが、ここで始めてご対面か!嬉しくなり思わず笑みがこぼれた。早速売り子に銭を渡すと、包丁で黒色の硬い皮を乱暴に削ぎ手渡してくれた。「一度やりたかったんだよなあ、これ!」とガブリかじりつく。ジュワー、甘い汁が口にあふれる。しかし噛んでいると硬い繊維が口の中に残るのには閉口した。

ところで最近この台湾で総統選挙が行なわれ、民進党の蔡英文氏が得票率57パーセントで再選された。香港で民主化闘争の始まる半年以上前、蔡英文総統は親中派で中国との統一を望む国民党の韓候補より不人気であった。今の国民党はイデオロギーより経済優先で、政権を取ったら中国との融合政策で台湾はもっとリッチになりますよ!というスローガンを掲げていた。ところが香港での騒動が始まり、警官による暴力的な弾圧がマスメディアで放映されると、状況は一変する。香港の二の前になりたくないという機運が盛り上がり、一気に蔡英文氏の支持率が高まっていった。中国本土共産党の支配下に入れば言論の自由は全く無くなる。多少経済的に潤っても厳しい統制、監視社会では元も子もないと人々は気づいた。

元来中国本土から逃げてきた蒋介石一派をルーツにもつ国民党は中国回帰をのぞんでいる。これに対し蔡英文の民進党は台湾独立派で民主主義を堅持し、どちらかというと経済よりも台湾人としてのアイデンティティーを大切にしたいと望む人々に支持されてきた。蔡英文氏の再選は台湾の独立国としての志向を強め、中国本土からの切り離しを進める方向に舵を切る。アメリカのトランプ大統領もこれを支持、議会で台北法案を可決し台湾の独立を支援することになった。一方共産中国は内政干渉だと強く反発する。日本にとっては台湾の動向は非常に重要である。もし台湾が中国に飲み込まれると日本は東アジアで孤立し、中国との対峙に抗しきれずやがて中国の傘下にはいることになる。

台湾が独立国としての道を歩めば、日本の良きパートナーとなる。でも政治家は中国の顔色を伺い、台湾の国家承認などしないであろう。金儲け優先の経団連に引きずられて中国に擦り寄れば、いずれこの国も飲み込まれる.

(勝田陶人舎・冨岡伸一)

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