竿竹

そういえば用具素材として最近は竹を見る機会がめっきりと減った。竹で編まれた籠、箸、ヘラなど家庭内の道具類、そして庭を囲む竹垣、物干し竿など以前は竹で溢れていた・・・。「竹やー、さおだけー!」子供の頃この声を聞くと今まで一緒に遊んでいたヨッチャンが、急に血相を変えて家に飛んで帰る。「どうしたんだ?」原因が分からない。でもヨッチャンは竿竹屋が大嫌いだった。当時竿竹屋は長めのリヤカーに竿竹を積んで、町内を巡回し売り歩いていた。竿竹は長いので店で買っても持ち帰るのが大変!それに耐用年数が限られ数年で折れる。そこで常に需要があり頻繁にやってくる。「邪魔だからどけ!」とヨッチャンが砂道に絵を描き遊んでいるところを、突然竿竹屋に怒鳴られたと後から聞いた。

しかしこの竿竹!その後簡単に腐らないように、表面を空色のビニールでコーティングするようになると耐用年数は伸びていった。さらに時代も進むと竿竹は竹から鉄のパイプ、そしてより軽く腐らないアルミなど金属に変わった。すると良いのか、悪いのか?長持ちするので買い代え需要がなくなり、竹屋も売りに来なくなった。洗濯機も全自動の普及で、マンションでは洗濯物を外に干すことも減っている。また近年では竹の需要減少で竹林の放置も問題だ。でも京都の美しい竹林は、海外からの観光客で賑わっている。竹林も手入れ次第では立派な観光資源になるのだ。美しい孟宗竹、暑い夏場の流し素麺の割り竹以外でも、もっと有効な使い道はないものだろうかと考える。

冗談にパンダにでも食わせりゃ良いと思うが、パンダは孟宗竹を食べるわけではないらしい。ジャイアントパンダは竹よりも笹を好むという。でもどんな笹でも食べるわけでなく数種類に限定される。熊の仲間のパンダ、以前は肉食動物であったとか!そのため消化器官も熊とあまり変わらず、特別な胃や長い腸をもっているわけではない。そこで硬い笹や竹の消化には時間がかかり、一日に16時間も食事についやすらしい。パンダが栄養価の低い笹を食べるようになったのは、自ら好んだわけでなく人に追われ、食べ物の無い山奥に逃げ込んだことによる。人との争いを避けた優しいパンダは繁殖力も弱く絶滅危惧種でもある。

春になるとまた竹の子のシーズンとなる。小さい最初の一本なら歓迎だが、何本か頂くと竹の子ほど迷惑なものも無い。茹でるのが大変で少人数ではなかなか食べきれず、いつまでも残る。(勝田陶人舎・冨岡伸一)

 

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