干し芋

昨年のことであるが、このコロナ禍に名古屋駅前のユニクロでパニックが起きた。報道によると人気ファッションデザイナーのジル・サンダーとユニクロがコラボし、新発売した衣料品に客が殺到して、商品を奪い合う混乱状態になったという。その結果マネキンの着ている服まで脱がされ、胴から二つに折られたマネキンが床に転がる。この光景に私は暴動に乗じて店舗を荒らす、海外ニュースを見るようでとても困惑した。同時に最近オシャレを忘れたと思われていた日本人も、価格が安ければ有名デザイナーの衣服を奪い合うメンタルをまだ持ち合わせていることに、複雑な感情も抱いた。「オシャレはしたいけど、ブランド品など高くて手が出ない人たちが、今の日本には大勢いるらしい?」

「ストライク!」とお尻のツギあてに拳骨が飛んでくる。子供の頃はどこの家庭も生活が苦しく、長く履かれたズボンはお尻の部分がすれて穴が開く。するとそこに布アテをするが、その布アテの形状が問題となる。丸くパッチワークすると、その形がキャッチミットに似ているので最悪だった。そんな子供の気持ちを理解せずに母親が勝手に丸くパッチワークすると、そのズボンを履かずに放置した覚えがある。母親には「どうしてこのズボン履かないのよ」と問われると、「友達にからかわれるから」と告げた。すると後日、裏から目立たないようなツギあてに変わっていた。戦後復興も進み庶民の所得が徐々に上がり始めると、ツギアテをしてまで衣料品を着る「モッタイナイ」文化も消えていった。

たぶん日本では我々団塊世代が、一番オシャレを楽しんだ世代ではないだろうか?色気づいた高校時代のアイビールックに始まり、70年代のロンドンポップ、パリのプレタポルテから80年代のデザイナーブランドへと続き、バブルの頃には高価な海外のブランド品を身につけることが流行った。しかしその後の日本は30年間ダラダラと豊かさを失い続ける。反対にますます勢いを増すユニクロのファストファッションは多くのブランドを淘汰していく。先日はあの一世風靡したレナウンも、会社更生法の適応申請もむなしく、新たな引き取り手も無いまま倒産した。もう廉価なユニクロやワークマン以外、ファッションはビジネスとして成り立たない時代になっている。オシャレをして心ウキウキ街に繰り出し、女の子に声をかけるバカで行動的な男の子も減った。

ツギあてズボンの頃、冬場に好きでよく食べていたのが干し芋である。白く粉をふいた干し芋は遠い昔の故郷の香りがする。(勝田陶人舎・冨岡伸一)