私の子供の頃に飲んだ薬の中で、いちばん印象に残る薬はなんといっても、あの強烈に苦い「正露丸」である。黒くて長丸だった正露丸はわが家の常備薬ではなく、たまたま訪れた友人宅で飲んだ記憶がある。その時は別に腹痛でもなく「これ噛んでみ」とふざけ半分に手渡された。まだ昭和も30年前後なのでクスリの多くが漢方などの生薬だった。
当時わが家では風邪をひくと「改元」という顆粒で同じくほろ苦い生薬を飲む。そして厚い布団を頭からかぶり、顔を真っ赤にして汗をかく。すると熱も下がり、2,3日で全快した。しかしこの方法は子供の体力が落ち、健康によくないとかで徐々にすたれていった。すると同時に改元もクスリ箱から消え、「ルル」や「パブロン」といった大手製薬会社などの西洋薬に代わった。
「パブロン・ゴールドがいま急激に売れている!」その原因はまた始まった中国人によるクスリの買占めであるという。ゼロコロナ政策での都市封鎖をいきなり解除したお隣では、いま感染爆発がすさまじい勢いだ!そのため患者であふれる病院はまともに機能せず、多くの人々は薬局で売る薬に殺到する。結果品薄になった風邪薬は5,6倍に跳ね上がった。
そしてこれを商機と考える中国人が、日本やアジア各国で風邪薬の買占めに走る。中には在庫全部、あるいはダンボールごと買う人もいて日本でも風邪薬が品薄になる可能性もある。特に中国人に人気の大正製薬のパブロン・ゴールドは、飲むとじきに症状が和らぐので特に人気があるらしい。数年前のマスクと同様に今回もマツキヨの棚から風邪薬が消えて、定価では買えない事態など起こらなければよい。
「良薬は口に苦し」という格言が昔あった。今のクスリはまわりがコーティングされているので、クスリの味を感ずることは殆ど無い。でもクスリが苦いとなんとなく効く感じもする。コロナの出始めでは正露丸が効くのでは?という冗談めいた話も聞いた。(もうすぐ中国の春節が近づく、でもコロナ禍での来日は控えて欲しい。勝田陶人舎・冨岡伸一)