茶飲み話・曼殊沙華

 

彼岸花、別の名を曼殊沙華ともいう。曼殊沙華は梵語サンスクリット語で赤い花という意味だそうだ。なんとなく墓地に咲く花というイメージのこの花は、そのほか葬式花、死人花、地獄花、火事花、キツネ花、捨て子花など日本全国で千もの別名があるというので驚きだ!でもそのどれもがなんとなく不吉な名で呼ばれる。

彼岸花と言えば、私にとって印象に残るのは東海道新幹線の車窓から眺める田園風景である。この時期に新幹線に乗り、名古屋駅を過ぎ「関が原」に近づくと、眼前に広がるのが田んぼの畔道に咲く、多くの赤い彼岸花である。山麓を背後に緑と赤のコントラストが美しい。でも見とれているうちに列車は狭い関ヶ原谷へと侵入する。わずか数分のパノラマなので見逃す人も多い。

「なぜこの地方の畔道には彼岸花が多く植えられているのか不思議!」とずっと思っていた。そこで調べてみると、彼岸花は花全体にリコリンやガラタミンなど20以上の有毒アルカイドを含んでいるという。そこで彼岸花を植えるとミミズなど害虫の発生が少なく、モグラなども寄り付かないらしい。また球根は毒性が強いので、害獣などの掘りおこし防ぐため、彼岸花を墓の周囲に植えている。

彼岸花の不思議のもう一つは、いくら探しても葉が見当たらないことである。辞典を引くと彼岸花の葉は花が枯れた後に出て、翌年の4月頃に枯れるという。そこで彼岸花の別名が「葉見ず、花見ず」である。花の咲いている時は葉がなく、葉が出ている時は花がない。「それでいくら探せど彼岸花には葉がなかったのか!」この年になって納得。

でも猛毒な球根も飢饉の時には食料にされたという。球根にはでんぷんが含まれていて何度か水にさらすと毒が抜け食料になるという。たぶん昔、多くの先人達が彼岸花の球根をかじり病に倒れたと思う。そこで花の美しさを度外視し、この花には忌まわしいイメージがまつわり付いたのかもね・・・。(近年は彼岸花のイメージもだいぶ変わり、各地の群生地は観光スポットになっている。勝田陶人舎・冨岡伸一)

 

 

 

 

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