日々ジワリ、ジワリとドル建てゴールド価格が最高値を更新する中、ここ数年殆ど価格変動がないのがプラチナである。そのためゴールドとの値差は開く一方で、昨年まで半分であった価格が現在では3分の1に近づく方向に推移している。本来ゴールドの産出量は年間3000トン、プラチナはたったの150トンで20分の1の生産量しかない。そしてその産出国は南アフリカ一国に集中している。
そもそもゴールドは重いので地中深く、マントル層に存在しているので火山の噴火や温泉などに溶けて地上に噴出してくる。そこで火山活動が活発で温泉が湧き出ている所なら、どこでも金が産出される。一方プラチナは地球上の鉱物でなく隕石の衝突によって地球にもたらせれたもの、そこで隕石が落下した南アフリカやロシアの一部にしか存在しない。
「地中1000メートル近く、気温60度という狭い坑道での過酷な作業は大変危険だ」。大昔、プラチナ隕石が地球に衝突したとき広範囲に飛び散ったので、プラチナの鉱脈層は非常に薄く分布する。地中深くは気温も非常に高いので常に坑道全体を空調しなければならない。そのため大量の電気を消費する。最近では太陽光発電を利用して電気を作っているが、以前は火力発電に頼っていたので夏場は電力不足でたびたび操業を停止していた。
しかしそのような貴重な金属プラチナの価格低迷にはいくつかの原因がある。まずはプラチナの用途がホルクスワーゲンなどディーゼルエンジン車の排気浄化に多く使用されたが、昨今の電気自動車の登場で需要が急減した。そして金より控えめなプラチナの装飾品を好む日本人が、人口減少で結婚指輪などの需要が減る。人口の多い中国やインド人などは元来地味なプラチナの装飾品は好まない。以前は日本がプラチナの最大輸入国であったのだが・・・。
でももしこれから温暖化問題で二酸化炭素を排出しない水素社会が訪れると、プラチナは水分解の電極や、水素自動車などに使用されるため多くの需要がうまれる。金の不気味な上昇が続く中、プラチナが何倍にもなると夢見る人は今からコツコツとプラチナ積み立てをしてみるのも良いかも・・・?プラチナは採掘コストぎりぎりなので下値は堅い。(注意、もっと急激な円高がやって来る可能性もあるので、今は動かないこととがベストかもね。勝田陶人舎・冨岡伸一)