イタリアペルージアの語学学校に通っていた頃、長期滞在になるのでペンションからワンルームのアパートに引っ越したことがある。ペルージアの町は歴史が古く、この石造りのアパートもかなりの年代もの300年以上経つと聞いた。私の借りた十畳位のワンルームには中央に大きめのベットがあり、簡単な箪笥とテーブルが置かれていた。4万円程の家賃ではこんなもんだろう?納得し住み始めたがトイレと一緒に付いているシャワーのお湯が出ない!それもタラタラと水が滴るだけだ。友達に聞くと、どこのアパートもだいたい同じだと言う。(山の上に街があるので水圧が低い)イタリアの夏は乾燥しているので汗は殆どかかないが、のどが異常に渇く。
何年もここに住んでいる日本人に聞くと、ドッチェリア(シャワー屋)があるからそこに行けという。街外れにあるその場所を教えてもらい尋ねてみた。入り口を開けるとおばさんがいて、銭湯のように三百円位の金を払い中へ入る。するとそこには幾つかの小さなシャワールームの扉が並んでいた。指定された番号の扉を開けると、二坪程の空間に脱衣場とシャワーが設置されている。そして見上げるとシャワーの上にはタンクがあり、ここにお湯が溜まっているらしい。このお湯を全部使い切ると終わりだと言う。でも体を洗うには十分で気持ちが良い!
イタリア人も余り体を洗わない、二週間位体を洗わなくても平気だ!しかしだんだんカビくさい臭いがしてくる。日本人は皆さん風呂好き!語学学校で知り合った大阪出身の友人ヒロシ君と、「風呂行くか?」授業が終わると誘い合い、三日に一度はここに通うようになった。(彼はその後ここで知り合ったベルギー人の彼女と結婚したが、その後の消息はわからない)そして風呂上りにはビールが美味い。帰りには必ずバールに立ち寄り、通りに置かれた藤の椅子に腰掛け、ビールを飲みながら行きかう人々を眺め雑談する。30歳で同じ年齢の人々が日本で忙しく働いていると思うと、極楽トンボいいとこだった。
イタリア人はワインが主でビールはあまり飲まない。ワインを好むラテン系の国々では相対的にビールは余り美味くない。
(千葉県八千代市勝田台、勝田陶人舎・冨岡伸一)