千葉県の北東部には、小江戸佐原と呼ばれる歴史ある建物が残る町が利根川沿いにある。ここは川で取れた小魚を串に刺し、甘辛く醤油で煮た「スズメ焼き」という佃煮の発祥地であると聞く。スズメ焼きという名の由来は、むかし殿様に小魚を開いて串に刺し煮付けて献上したところ「これはスズメを焼いたものか?」との質問を受け、それからスズメ焼きと呼ばれるようになったらしい。今では小魚を丸ごと何匹も串に刺し煮たものもスズメ焼きという。我が家ではスズメ焼きは正月のお節で頂く程度で普段あまり食べることもない・・・。ところで雀は我々日本人にとってはもっとも身近な野鳥であろう。でもその雀が近年激減しているという記事を読んだことがある。
「あんなにスズメを捕ってどうするんだ?あの叔父さん」夏も過ぎ田んぼの穂が黄色く色づき始めると、子供のころ自宅付近では実った米を食べる害鳥とされていた雀を駆除し、それを食用にする空気銃を手にした叔父さん達をよく見かけた。その叔父さんの腰のあたりには、撃ち落した雀4,5羽が紐でくくられている。歩くとそれらがぶらぶら揺れて、なんとも誇らしげに見えた・・・。「よし!」とスズメを打ち落してみたい衝動にかられた私は、さっそく駄菓子屋に駆け込みゴムの紐で出来たパチンコを買う。そして小石を拾い屋根に止まっているスズメを狙うが全く当たらない。そこで友達にも声をかけ、7人で一度に散弾をスズメに浴びせることにした。
「おー、当たったぞ!」何回か試みると、歓声と同時にスズメがコロコロと屋根から転げ落ちてきた。嬉しくて駆け寄り、初めて手で触れたスズメの感触はまだほんのり暖かく、なんともいえない。「これ喰ってみるか?」と一人が言いだした。私もスズメを食べたことが無いので賛同し、さっそく野原で焚き火をおこす。毛をむしった小さな雀を枝に刺し火にかざす・・・。「しばらくすると、なんとも良い香り」だが食べる時になると躊躇する。「お前食え、いやお前が食え」みなが譲り合う。「よし俺が食うぞ」意を決した私は小さな雀の足をもぎ取り口にした。赤みを帯びたその肉は臭みがあったが「うん、まずくない」私の一言に皆が恐る恐るスズメ焼きを口に運ぶ。こうして小さなバーべキュウは無事に終了した。
そういえば最近は収穫時の田んぼを見ても、案山子や防鳥ネットを張ってあるのを殆ど見かけなくなった。(勝田陶人舎・冨岡伸一)