私の生家は神田に居を構え、江戸時代より三代続く和服に日本刺繍を意匠することで生計を営んでいた。おもに日本橋三越の呉服誂え方に所属し、帯や着物に針を刺す。そのため幼児の頃より自宅の畳間には反物が広がり、それらを眺めて育ったので当然衣類には関心を寄せた。そのためそれらの環境が二十歳を過ぎた後に、導かれるようにファッション業界に進んだ縁に繋がったと思う。
「外柔内硬(がいじゅうないこう)だぞ!」と父親にはよく言われた。人には色々生き方のスタイルがあるそうだ。外見はカッコつけのチャラ男、しかし内面はしっかりポリーシーを持ち硬派。それが親父の生きる美学らしかった。ところが高校生の私はバン、ジュンでかっこつけのオバカ。見かねた父親は「本代ならいくらでも出す、徹底的に本を読め」の一言だった。
そんな私も最近では衣類へのこだわりもなくなり、もっぱらユニクロでユニラーしている。でもこのユニクロ、いま欧米各国から猛烈なバッシングを受けている。ウクライナの問題で世界中の企業がロシアからの撤退声明をしている最中、ユニクロは商売を優先し態度を曖昧にした。前年には中国のウィグルの人権弾圧でも共産党擁護の姿勢を取り、フランスの人権団体から訴訟を受けている。
「政経分離で政治と経済は関係ない」と団塊世代のユニクロ・ワンマン社長は今だに考えているらしい。いまグローバル企業の経営は難しくなった。常に世界中人々から環境への対応や人権に関する企業倫理の目が光る。対応を誤るとすぐに商品ボイコットや訴訟へとつながり、ブランドイメージが失墜する。カリスマ経営者とたたえられた独善的な柳井さんのユニクロも、そろそろオワコンか?
今後独裁国家中国が欧米からの規制対象となったとき、売り上げの半分近くを中国で稼ぐユニクロはどう対応するのであろうか?時代を見誤れば、つい先ごろまでは絶好調であったユニクロとて、一世風靡だったダイエーのように没落することもある。企業も国家もドンが人の意見を無視し独裁者になった時、その体制は瓦解していく。(祇園精舎の鐘の音・・・。奢れる者久しからず。ただ春の夜の夢の如し・・・。写真・底の割れた茶碗を植木鉢に。勝田陶人舎・冨岡伸一)