包丁

このところ日本食は世界的に人気がある。そのため海外で日本食レストランを開業する外国人も非常に多いという。早朝の通勤時間帯によく会う、近所に住む浅草橋で刃物屋を商う知人に聞いた話だが、ここ数年急に和包丁を求める外国人が、彼の店のも多く来店するようになったという。十年前は和包丁が売れなくなり廃業も考えたと言うが、今はネットのくちコミを海外で見て店を知り、わざわざ直接尋ねてくるそうだ。そして友達にも頼まれたと、一本10万、20万の高い包丁を何本も買っていくらしい。こんなことならもっと若いとき、英語を勉強しとけば良かったと嬉しそうに話していた。

「和食は包丁が命!」切れが良くなければ始まらない。和包丁には根底に日本刀を作る刀鍛冶の高い技術と伝統があり、簡単に外国人が真似して作れるレベルのものではない。切れる包丁で切った刺身は角が鋭角に尖っていて、緊張感があり美しくさえもある。そのためには包丁と共に研ぐ技術も重要だ。研ぎ方一つで切れ味も全く変わるが、これが素人にはなかなか上手くできない。以前家業が日本刺繍の我が家では、反物を切る裁ちバサミは商売道具でよく使っていた。切れなくなると専門家に頼むのだが、当時は研ぎ屋さんという人がいて定期的に巡回してくる。

「ハサミ、包丁、バリカン研ぎー!」の口上と共に研ぎ屋のおじさんが、何本かの砥石の入った木箱を肩からさげ我が家を訪れる。庭にドッカと腰を降ろすと、子供たちが洗面器に水を入れおじさん差し出す。すると箱の上に砥石を置き「キーコ、キーコ」と研ぎ始める。私はおじさんのリズム感のある手つきをじっと見ていたが(何を思ったのかすぐ上の姉が)突然おじさんの顔を覗き込んで、「おじさんの顔って、鬼みたい!」と口走しった。確かに縮れ毛のその赤黒く日焼けした風貌は鬼そっくり!これを聞いたおじさんは苦笑していたが、私は下を向き笑いをこらえるのに必死だった・・・。それを窓越しに見ていた父親が「目配せをし、止めようと動作する」しかしすでに遅かった。そしておじさんが帰ると「あんなこと言うもんじゃない!」と苦笑いしながら諭す父に「だって鬼にそっくりだもん、しょうがないじゃない」と姉も笑ってこたえた。

写真は以前懐石料理を習っていた時の包丁セット。こんな包丁を鬼が研いでいたら本当に恐ろしい!(千葉県八千代地勝田台、勝田陶人舎)

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