雷魚

釣り好きだった私は子供のころ近所にある沼や池、小川などほとんどの水場の魚の種類を調べて歩いた。「何故こんなところに池があるんだろう?」不自然に畑のど真ん中に、ぽつんと孤立している10メートル四方の小さい池が気になった。あの池にも何か魚がいるのではないか?でもそこは生垣に囲われた畑の中なのでよく確認できない。地元の人に聞くと東京空襲のとき米軍の爆撃機が残りの爆弾を落としていった痕だという。そこに水が溜り爆弾池と呼ばれるようになったようだ。このように昭和30年頃までは戦災の痕跡もまだ色濃く残っていた。釣りは比較的早朝がよい。早起きして勇んで目をつけた池に行くと、もうすでに顔見知りのお兄さんが釣り糸をたらしている。「しー、音を立てるな!」静かに前を通り過ぎ少し離れた場所に陣取った。

「よし、かかったぞ!」見ると近くのお兄さんの釣竿が激しくしなる。「これは結構デカイよ」5分ぐらいの格闘のすえ、上がってきたのは40センチぐらいの雷魚(ライギョ)だ。「気持ち悪い魚!」始めて見る雷魚の異様で不気味模様に驚く。半分くらい水面を浮き草で覆われた汚い池にも、こんなデカイ魚がいるんだなあ。その後も何匹か雷魚を釣り上げ、お兄さんは意気揚々と帰っていった。「これ喰うと旨いんだぞ!」とお兄さんは言い残して行ったが、あんな気持ち悪い魚が喰えるのかな?でも興味があったのでお兄さんの真似をして、後日駄菓子屋でもっと丈夫な針と糸を買い、蛙を餌に雷魚釣りに挑戦してみる。

「おかあちゃん、この魚食べられるんだって!」釣り上げた20センチ位の雷魚を喜んで持ち帰り、母親に見せると「あんたバカねー、こんな気持ち悪い魚なんて食べられる訳がないっでしょう。早く逃がしてきなさい!」と失笑されたのだ。でもこの雷魚(外来種で1920年に朝鮮から食用にするために持ち込まれた)中国や東南アジアでは人気食材だという。綺麗に洗ってヌメリを取りブツ切りにし、油で揚げると結構旨いらしい?子供の頃はまだ食料が潤沢になかったので、赤蛙や海老ガニは喰える。トノサマガエルは不味い、雷魚やフナは旨い、などと食べた事が無いのに適当に尾ひれをつけて、男の子の間では話題にしていたのだ。でもガマ蛙だけはだめだ、そのころ父親の知り合いでガマ蛙を食べて死んだ人がいると話していた。

昔から続くトンボとり、釣り、植物採取など男子の遊びは本能的な食料集めだと思う。(千葉県八千代市勝田台、勝田陶人舎・冨岡伸一)

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