カレー丼

私の幼少期カレーライスは子供達にとって憧れの夕食の一つであった!そのころは今のように、簡単に作れるカレーライスのルーはまだ市販されてない。各家庭では主婦が、小麦粉と小さな缶に入ったヱスビーのカレー粉を、フライパンで良く炒り使っていた。そのためカレー粉を炒るとその匂いが外に漏れ出し、カレーを作っている事がすぐに近所にばれる。すると友だちが「伸ちゃん家、今夜カレーか!いいなーあ」と羨む・・・。湯の沸いた鍋の中に肉と野菜を入れ煮込み、炒ったカレー粉と小麦粉を少しずつ溶かしこんでいくと、どうしても小麦粉がダマに固まることもあった。それでも子供達はそのダマのカレーライスを喜んで食べた。

「伸ちゃん!きょう俺ん家カレーだええ!カレーだええ」夕方近所の友達がわが家にすっ飛んで、この吉報を伝えに来た。そして満面の笑みたたえ、スキップして帰るハジメちゃんの顔は今でも忘れない。このように子供達に人気のあったカレーライスだが、我が家ではいちど豚肉の代わりに、アサリの剥き身を入れて作る今で言う、シーフードカレーが登場したことがある。肉好きの私は生臭いのでこれには閉口し、いつもする「お代わり」の言葉は出なかった覚えがある。父親は若いころ東京が震災で焼け野原になったとき、神戸の親戚の洋食屋で半年間コック修行をした経験があるので洋食にはうるさい!ご飯は舟形の型でとり「カレーは絶対にご飯の上からかけてはだめ」と盛り上げたご飯の横にサラリと自ら流し込むと「なるほど!」確かに見た目は美しかった。

ところでその神戸にある蕎麦屋で出すカレー丼が、超美味いと感じたことがある。兵庫駅の山側にあった、松涛庵という名の蕎麦屋のカレー丼は絶品だった。そばつゆに使う良いダシで作るのか?肉だけのダシの味とは違い風味とコクがあった。トロミも片栗粉でつけるので品が良い。東京に帰りこの蕎麦屋のカレー丼の味を求め、あちこちの蕎麦屋でカレー丼を食べ歩いたが、基本的には関東と関西ではダシのとり方が違うのか?二度とこの味には出会えなかった。そしてこの店のタマゴ丼も同じく美味だったので、やはりその秘密はダシにあることは確かだと思う。関西人が東京で蕎麦を食べると汁がまっ黒で「醤油の味しかしない」と不満を述べる。

カレーごときで飛び上がって喜ぶ時代がつい先ごろまで日本にもあった。でもいまの飽食の時代がずっと続くなどと思わないほうが良い!人は誰でも一生のうちに豊かな時代と貧困時代を一度は経験する。

(勝田陶人舎・冨岡伸一)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です