小鳥

鳥篭に小鳥を入れ飼っている人を最近あまり見かけない。以前は美しい声で鳴くカナリヤや、ジュウシマツ、ブンチョウ、インコなどの小鳥を飼う家庭が多かったが、なぜか飼う人が減少した。私の工房がある勝田台のバス通りにも一軒の小鳥屋があったが、15年以上も前に廃業した。そういえば近年ペットショップに行っても小鳥はあまり見かけない。その代わり一時期犬を飼う家庭が増えたが、毎日の散歩が大変なのか?犬を連れ歩く姿に以前ほど出会わなくなった。昨今ネコカフェと呼ばれる喫茶店があるらしい。お茶を飲みながら自由に猫を抱いたりできるそうだが、私は猫のいる飲食店などは衛生的な面で抵抗を感じる。

「あれ、目の錯覚かな?」大き目のトレイの表面がゆっくりと波打っている。すると「はっと思い、突然一歩引いた!」目でフォーカスするとなんとそれは全て蛆虫のような茶色いワームで満たされていた。もう25年ほど前になるが香港の靴の展示会に参加したことがある。仕事の合い間に一人香港島の対岸にある九龍地区のを散策していると、近くにペットの鳥専門に商うマーケットがあると聞いたので訪れてみた。ゴミゴミとした小さな店舗が並ぶその中に進入すると、アレルギーなのか?やたらにクシャミがでる。ハンカチで口を抑え、なおも進んでいくと鳥篭を吊るす下でその妙な虫と出合った。

聞くところによると、その蛆虫は葦の茎に巣くう虫で鳥の餌だという。しかしよくもまあ、こんな沢山の数を集めたものだ。茎から取り出すのも大変だろうと感心した。住宅事情の脆弱な香港の一般庶民は、犬猫などは飼えないのでお年寄りは小鳥をペットに飼う人が多いという。いつも穀物などの餌では小鳥の健康にも良くないらしく、たまにはこのワームを餌として与える。我が家でも数年前まで犬を飼っていたが朝晩の犬の散歩の役目はいつからか、犬嫌いの私の担当になっていた。私の子供の頃は家庭の飼い犬の大半は放し飼いにされていた。そこでよく犬に追いかけられたり噛まれたりする・・・。そのご犬の放し飼いが徐々に禁止になり、野良犬も犬殺しと呼ばれた保健所の捕獲員に一掃された。

今では子供が犬に追いかけられることもない安全な街となる。われわれの世代以上に犬嫌いが多い理由は、子供のころの経験にあると思う。

(勝田陶人舎・冨岡伸一)

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

© 2024 冨岡陶芸工房 勝田陶人舎