寿司屋の隠語

接客業には通常従業員同士で使う隠語があるところが多い。客には知られたくない言葉や従業員同士にしか分からない商売上の言葉などいろいろだ。その中でも一番身近に感じるのは「寿司屋」である。寿司屋では生姜(ガリ)ご飯(シャリ)胡瓜(カッパ)イカの足(ゲソ)などいろいろあるが、特に客が使ってはいけない言葉にお茶の(アガリ)お会計の(オアイソウ)などがある。まだ食事中の客が、お茶のお代わりを従業員に「お姉さん、上がり持ってきて」などと頼んでいることもあるが、アガリとはこれでお終いという意味である。同様にオアイソウという言葉も店側が「愛想が無くてすいません」という意味で客が使うと、おかしなことになる。だだお勘定といえばいいのではないか。

ときどき、知ったかぶりをして寿司屋の隠語を連発している人を見かけるが、「普通に言えば良いのに」と思うこともある。寿司屋の隠語を通なふりをしてなんでも真似すると、逆に無粋になることもある。寿司屋に隠語が多いのは寿司を手で握るため、いつも手を清潔に保つ必要がある。手が汚れるので雑用が出来ない。そのために他の従業員に、言葉で指示することが多いからではないのかと想像する。私は寿司屋に行っても隠語はあまり使わない。でもカッパやゲソなど普段使いの言葉になったものある。こちらが「お茶ください」と言うと、板さんが奥に「上がり一丁」と声をかける。「ご飯少なめね」「はいシャリ少なめ」とこの言葉の掛けあいが良い。

そのために店側がわざわざ隠語を使い、客の言葉と区別しているのだから、その中に割って入ることもないのではないか。客が「シャリ少なめにしてね」「はいシャリ少な目」ではなんか粋じゃないと思うがいかがでしょうか。さいきん回転寿司に入るとどんどんデジタル化が進んでいる。オーダーのほとんどがタッチパネルである。タッチパネルの使用法が分からないと寿司も食えないのかと思うが、時代だからと割り切るしかない。近い将来寿司職人も減り寿司屋の隠語も不要になり、握りも魚ではなく肉が主体になるかもしれない。和食が世界に浸透すると魚の奪い合いになり、日本人の食卓からなくなって行くのではと心配になる。

写真は自作のお皿、寿司は陶器の皿でも合うと思う。(千葉県八千代市勝田台、勝田陶人舎)

“寿司屋の隠語” への1件の返信

  1. 寿司屋さんの隠語を楽しく読ませたいただきました。私は小売業で店舗勤務をしていた時の文字符牒と口符牒を思い出しました。それは値札の裏に数字の1~0を意味するカタカナ10文字で仕入れ原価を書いた文字符牒でした。また、「店長!先ほどお留守の時に《○○様》がお見えになりました。」《○○様》とは、《万引きなどの不審者》のことをあらわす口符牒です。店長は警備・保安室へ電話連絡し、店メンバーは不審者に要注意といった対応でした。きっとどこの業界でも隠語が使用されていることでしょう。
    さて、寿司屋の隠語、懐さみしい私ですが客の立場では「粋なようでかえって野暮な」業界隠語は遣わないようにしたいものです。写真の陶器皿は、けん・あしらい・薬味などをつかい鮪の赤身の刺身、いや白身魚の刺身を一点盛りでいただきましょう。

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