キヌカツギ

キヌカツギと聞いても、最近の若い人は知らない人も多いと思う。それはサトイモの小芋で、蒸して皮を剥き醤油や塩を付けて食べる。子供のころ母親が秋になると時々オヤツに出してくれたが、今では殆ど見かけなくなった。市川市の中山には法華経寺という日蓮宗の大きな寺がある。京成中山駅を降りて緩らかな傾斜の参道を上り、正面にある山門をくぐると石畳の道の両側には歴史ある寺が並び、今でも昔懐かしい風景を留めている。その境内の入り口近くには一軒の茶店があるが、ここはキヌカツギを名物にしていた。シーズンになると店頭のセイロでキヌカツギをいつも蒸かしていたが、今でもあるのかどうかは分からない。

「あんた何やってんの、可哀そうだから早く逃がしなさい!」遠くで見ていたおばさんが近づいてきて怒鳴る!「せっかく捕まえたのに!」渋々放すと鳩は天空に舞い上がった。「残念!」鳩が飛ぶ軌跡をずっと目で追う。子供のころ鳩を飼うことが非常に流行ったことがある。どうしても鳩を飼いたかった私は友達と相談し、中山の法華経寺に自転車に乗り鳩の捕獲に向かった。境内に着くと、さっそく用意してきた餌を撒き鳩をおびき寄せる。でも捕まえようとすると鳩は身を翻して逃げる。何度も試すが全然だめだ!あきらめかけたその時、飛び立った寸前の一羽を空中で捕まえた。暴れる鳩を両手で押さえ込んだその時だ「やばい!」おばさんが小走りに近づいて来た。

仕方ないので他の調達方法を考えていた時に朗報が届いた。「釣り鳩が小屋に入ったから取りに来い」という。いぜん近所の中学生の仲のよい先輩に「こんど俺の友だちの鳩小屋に釣り鳩が入ったら、俺が貰う約束をしたのでそれをお前にあげるよ!」といってくれたのだ。「ほんと?嬉しくて飛び上がった!」(釣り鳩とは運動のために鳩を一日数回飛ばすが、その時に自分の鳩が飛んでいる群れに加わる迷い鳩)次の日に先輩と一緒にその友だちの家を訪ねると、大きな鳩小屋には伝書鳩が20数羽もいた。「こいつだけど・・・。」手渡された鳩を大事に抱えて帰り、リンゴ箱二つで簡単に作った鳩小屋に入れてずっと眺めていた。しかしそれはじきに悪夢へとかわる・・・。(この続きは何時かまた)

今が旬なので、先日女房に頼んでおいたキヌカツギが今夜食卓に。子供の頃よく食べたキヌカツギと違い小ぶりで品が良い。

(千葉県八千代市勝田台、勝田陶人舎・冨岡伸一)

 

 

 

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