アンポ
「安保、反対!アンポ、ハンタイ!なんでも、はんたい!」などと口々に叫び近所の子供たちが路地を練り歩く。立ち話のおばさん達がそれを見て苦笑い。ついに60年安保反対デモが、子供達の遊びにまでなった瞬間だった!当時テレビが庶民の家庭にも普及し始めると、夜のニュースでは国会議事堂周辺の緊迫感が何度も放映されていた。日米安保条約の改正に反対する全学連のデモ隊と警察機動隊が激しくぶつかる状況を見て「なんでそんな悪い条約を締結するのか?」私は子供心に思っていた。そのころはの日本は今と違って、多くの若者は社会主義国家に憧れ、我が国も早く資本主義のアメリカから離れるべきだ!という世論も強かった。しかし自民党岸首相の主導の基、なかば強引に60年安保は国会を通渇する。
そして半世紀以上も時が過ぎた現在その頃の記憶もうせ、60年安保のことなど誰も話題にしなくなった・・・。「日米安保条約など破棄することも考えるべきだ!」トランプ大統領が先日突然発言した。もともとはアメリカから押し付けられた感のあるこの条約であるが、確かに日本側に有利な不平等条約である。(日本が攻撃されたらアメリカは日本を守る。だがアメリカが攻撃されても自衛隊はアメリカと一緒に戦わなくてもよい)これはアメリカが日本を再軍備強化させないための戦略であったと思うが、もう60年以前の条約で今のアメリカには負担が大きいのも確かである。でもこの安保条約のおかげで戦後日本は国防にあまり金を使うことなく、日本のインフラ整備や経済発展に資金を集中することが出来たのだ。
私にはトランプ大統領の真意は分からない。でも自国を自ら守ることは国家としては当然のことである。戦争に負け無条件降伏をした日本は軍事面では手足をもぎ取られた状態が続いている。自衛隊という組織もあるが、もし在日米軍が引き上げたら邪悪な軍事大国に囲まれる日本など、簡単に領土をもぎ取られる。「中国、ロシア、朝鮮人も、相手は人間だ!話し合えば分かってもらえる、軍隊を持たない平和憲法を守りましょう。」という理想論を言う人がいる。でも彼ら国民の置かれている状況を見てほしい。人権や人間の尊厳は剥奪され何の批判もできず、ただ独裁者にひれ伏し忠誠を誓うだけだ。彼らの掟は喰うか喰われるかで殺伐としている!性善説でなりたつ日本人は、いつも相手の善意を期待する。でもこんな民族、世界広しと言えども大国では日本人しかいない。
そろそろ憲法9条を改正し、真の意味で独立国としての尊厳を取り戻す時期に来ているのかも知れない。トランプさんありがとう。(勝田陶人舎・冨岡伸一)
アンカレウドン
アンカレウドン
まだ今のロシアがソビエトと呼ばれていた頃、軍事機密の保持と防衛の理由でロシア上空を日本や欧米諸国の旅客機が飛べず、殆ど全ての航空会社のヨーロッパ便は、アラスカのアンカレッジを経由していた。しかしこの行程は時間がかかる。まず羽田からアンカレッジまで6時間。アンカレッジで給油のため飛行機を一度降り、ターミナルビルのロビーで3時間の休憩だ。再び飛行機に乗り込みヨーロッパの主要都市へは10時間、およそ20時間もかかった。でもまだ往きは気持ちが高揚しているので良いが帰りが困る。旅の疲れとエコノミークラスの狭い座席での長旅はもはや拷問に近く、やっとの思いでヨーロッパからアンカレッジにたどり着く頃にはもうヘトヘトだった。
「あれー、なんだこの懐かしい香りは?」眠い目をこすりアンカレッジ空港のロビーの長椅子に座り生アクビを繰り返すと、どこからか醤油らしき香り!立ち上がり臭いをたどると、去年まではなかった土産物屋の隣にうどん屋が開店していた。店内を覗くと駅蕎麦のようにどんを茹で上げている。でもメニューには月見うどんが十数ドルとえらく高い!「あと6時間我慢すればもっと美味いうどんが日本で食えるはずだ」と思いつつも日本人で賑わう店内に入る。しかし外国人はウドンなどに全く興味なく、遠くから不思議そうに眺めている。私は差し出された白い発砲スチロール碗の月見うどんに目を移し、それを2,3本を箸でつまみ啜ってみた。ふやけて腰のないネチネチウドンはだし汁もまずく、地元ホームの駅そば以下であった。
ところで先日近くのショッピングモールのフードコートに、買い物のついでに立ち寄った。見ると丸亀製麺の店頭だけが列を成す。若い人達も意外に多くいて人気があるようだ。ふだんウドンなど食べない私も、ためしに後尾についてみた。そして列が進み厨房で働くスタッフを見て驚く!忙しく働く人の殆んどが70以上に見えるおばあちゃん。その割には手際が良く活発に動く、「元気だなあー」動作に見とれた・・・。うながされて盆を手に素ウドンを頼むと、あとは好みで天ぷらをトッピングするのだという。先ずはカキアゲをとるが、「やばい、チクワの天ぷらが隣にあるあるぞ!」急に親父の顔が浮かんだ。子供の頃から我が家には禁止食材があった。焼いた生揚げ、チクワの天ぷらなどの幾つかだ。これらを食べると男の出世のさまたげになると父親はいっていた。安くて旨いのでそれで満足するようになるらしい。
最近ではラーメンに続きウドンも海外で大人気だという。この丸亀製麺もアメリカで店舗拡大中ときく。醤油の味と香りが世界中に広まった。この歳になるともう出世へのこだわりもない。次回はチクワの天ぷらをトッピングするか?
(勝田陶人舎・冨岡伸一)