「ついに来たか!」と突然の揺れにビックリして飛び起きる。先日10年ぶりに首都圏を襲った地震は場所によっては震度5強を記録した。しかし幸いにも激しい揺れは短期で収まり、人口密集地の都会でもそれほどの被害も出ずにすんだ。3っつの巨大プレートがぶつかり合う関東地方は、世界でも名だたる地震発生地であり、たびたび起こる小さな揺れには慣れている人々も、今回の揺れは驚いたと思う。
自宅の被害は全くなかったが、工房では土曜日に本焼きをするために窯詰めした棚板の一部が崩れ、作品が破損した。運よく壊れた作品は生徒さんのものではなかったので、それを取り出し並べ替えて事なきを得た。陶芸は高温焼成するので破損はつきものである。窯を開け作品を取り出して厳密に見れば、歪み、ひび割れ、釉だれ、など欠陥品との戦いであるといえる。いつしか理想の作品との出会いを夢見て、今回も焼成窯の点火スイッチを押した。
地震など天変地異といえば、私の好きな「方丈記」をおもいだす・・・。記述では鎌倉時代の元暦2年、巨大地震が起きて、山が崩れ川をせき止め、津波が起き陸を覆い、地割れして水が噴出、いやもう大変な物凄さであったそうだ。都の殆んどの建物は倒壊し、多くの死人が出たという。この時の大地震ほど悲惨なものはないと、作者「鴨長明」は綴っている。この頃の京都は、大火災や干ばつ飢謹、疫病などが流行し、凄惨を極めたらしい。
「人里はなれた田舎での隠遁生活、あこがれるなあ!」と青春時代は一人で読書などをして過ごすことが好きだった私は、鴨長明など隠遁生活者に心をよせた。そこで若くして晩年の仙人生活を夢想し、準備を始めたのが里山での作陶生活である。そして50歳の時に八千代市郊外に陶庵を結び、静かに自分と向き合う時間をもった。ところがだ、40才の時に陶芸と同時に始めた社交ダンスを習うと、「内向的だと思っていた自分は意外と社交的なんだ」と新たな自身を発見。そして歳を重ねてもその感情は継続し現在に至る・・・。
人生など本当に何が起こるかわからない。一夜にして平穏な生活が破壊されて路頭に迷うこともある。今心配されている災害の一つに南海トラフ地震がある。この地震が実際に起きれば、津波により太平洋側の主要都市はことごとく破壊され、日本は甚大な被害を受ける。でもこの地震は今後2,30年の間に必ず起きるというので、地震がくるたびに南海トラフが頭によぎる。(あらためて方丈記を読んで南海トラフの悲惨な状況を想像してみる。勝田陶人舎・冨岡伸一)