茶飲み話・カッパ寿司

「いったい今の世の中って、どないなってるんねん?」「ほんまこんなこと昔はありえへんかったわ・・・」先日ニュースを見ていると、あの安い回転寿司の「カッパ寿司」が全品一日半額セールを開催したと言う。すると当日は長蛇の列で、最大15時間待ちになったという。そこで店側は列に並ぶ客に配慮し、後日来店用に半額チケットを配る。しかしそれを受け取った一部の客は即刻メルカリで二千円で販売し、当人はその金で「浜寿司」で腹を満たしたという。

ネットではこれらの現象をみて、こじきの群れとか貧乏人軍団とか揶揄していたが、長らく続くデフレにより庶民生活は、かなりレベルダウンしてきている実態が浮かび上がる。でも直近では食品や生活必需品などの値上がりが、世界的に進行し始めインフレの影が忍び寄ってきている。今後は賃金上昇をともなわない諸物価の急激な値上がりが起こりそうなので、若い勤労者の益々の困窮が気になるところだ。

「これから日本一高い寿司屋に連れてってやる!」もう三十年近く前のバブル絶頂期のころだった。当時私が担当していた靴のブランドが人気で、一年で三億の利益が出たことがあった。すると喜んだ担当の常務が、美味い寿司をご馳走するといって連れて行かれたのが、当時根岸にあった「高勢」という名の高級寿司屋であった。白く丈の長い入り口の暖簾を分けて中に入ると、十数人が座れる弧の字型の無垢木の分厚いカウンター席に腰をおろした。

仕事にはシビアで普段どなることも多い常務も、この夜だけはにこやかで「お好きな物をどうぞ」と促がされた。多少緊張のためか寿司の味など忘れたが、私が驚いたのはその店では和服姿の女店員が客二人に一人付き、細かな気配りをしてくれる。確かにこれでは一人5万の支払いも納得できると感じた。しかし暫くするとこの店は突然閉店する。原因は不動産投資をした店主が、バブル崩壊と共に借金をかかえ店舗まで売りに出したと聞いた。

「たかが寿司、されど寿司である」昔は寿司屋のカウンターでいただく寿司は殆んどが時価で、お勘定がいくらになるかは店主の気分次第であった。同じような注文でも、勘定の額にけっこうばらつきがある。冗談に「まけてね!」の一言いえば千円くらいは安くなった。昔の寿司屋の板さんは皆さん頭がよかった。食べた物を伝票に記載せずに正確に憶えていたようだ・・・。(明朗会計の回転寿司全国出店により、握り寿司は庶民の食べ物になった。勝田陶人舎・冨岡伸一)

 

 

© 2024 冨岡陶芸工房 勝田陶人舎