茶飲み話・インフレ

最近アメリカではコロナ禍にも係わらず、物価の上昇が止まらない。すでに年率7パーセントも消費者物価が上がっているので、特に家賃の高いニューヨークのような大都市での生活は苦労が伴なうようだ。でも同時に賃金も上昇するので、現役世代で就労していれば差ほど影響はないのかもしれない。

一方わが国ではすでに30年もデフレが続き、物価は上がらないが給料アップもない状態が継続中だ。年金生活者にとっては真に居心地が良いが、そろそろ終焉の時期が近づいている。来るべきインフレにどう備えるかは各々異なるが、インフレーションとは一言で言えば「お金の価値が下がっていく」ことである。逆に上がるのは諸物価、不動産、貴金属、株、ビットコイン、美術品や骨董などだ。

「お前、インフレーションとデフレーションの違いが分かるか?」それは私が小学6年生の時であった。一緒に私立中学を受験するために自宅に来て勉強していた桑原君というクラスメートが、突然妙なことを語り始めた。困惑している私に「お前には分かるわけないよな」とばかりに、得意げにインフレとデフレの差異を説明する。日頃学校では授業などいっさい聞かず、先生を無視し続けたこの友は実は天才であったのだ。

彼の行動が面白い。たぶん今は考えられないが、毎日背負ってくるペッタンコのランドセルの中身は空っぽ。教科書やノートのたぐいはなく、セルロイド製の筆箱がカバンの中で遊び、歩くとカラカラと音を立てた。でも中学受験の算数は当時レベルが低く、植木算や鶴亀算程度だったために因数分解など数学を得意としていた彼には、小学校の授業など退屈でしかなかったのである。

しかしその後一緒に進んだ中学で、突然の訃報が耳にはいる。「桑原君が病気で亡くなった」という。たしかに彼の顔色は男の子にしては、色白で透き通るほどであった・・・。なんとんく経済学に興味を持ち、今だにインフレやデフレの金融論を語るのが好きな私の原点は、桑原君の当時としては大人びた語りに由来すると思う。これから始まるわが国のインフレは、スタッグフレーション・不景気の物価高・というやっかいな現象かもしれない。(森の中でお茶をいただく夢を見た。勝田陶人舎・冨岡伸一)

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