最近、昔よく通った駅近の本屋に出かけてみると入り口の脇に、老後生活をいかに過ごすかの様々な指南書がワンコーナー、ビッシリと並べられていた。そういえば工房のある八千代市勝田台団地も多くの住民が高齢者となっており、団地内を巡る循環バスに乗ると、およそ八割がシルバー世代で座席をうめる。あと10年もすると世代交代がスムーズに行なわれないと、この街は空き家だらけになる。
今年の年間ベッストセラー総合第一位は、医師の和田秀樹さんが書いた「80歳の壁」である。この内容を要約すると80歳を超えたら無理をせず、勝手気ままに好きなことをして自由に生きる事だそうだ。そのほか吉村芳弘医師の書いた「80歳の壁を超える食事術」という本も話題になっている。その副題は70歳になったらしっかり食べて、しっかり太っておきまあしょう!とある。
なにしろ80歳をむかえたら不必要なダイエットなどをせず、カロリーの高い肉なども多く食べ、小太りぎみな身体にしとくことが長寿の鍵となるらしい。でもウェストまわりがタイトで穿けなくなった多くのズボンを眺めると、もう少し痩せたいの願望がよぎる。しかしこの歳になると多少の節食では体重は減らない。そして1キロ痩せるのにも長い時間をかけることになる。
「あなたも泳いだら」。とフランス人ガールフレンドのベルナデットに促がされたことがある。それは半世紀以上もまえの、パリから北西部にあるドーバー海峡に面した遠浅の砂浜が続く海水浴場である。6月の海辺は太陽がまぶしく、目を細めて陽光をさえぎっていた。「うん、私はいいよ」とかるく首を横にふった。実はこの日、彼女の従兄弟数人がはるばる日本からやって来た私を、車で海水浴に誘ってくれたのだ。浜に着くと彼らは一斉にシャツを脱ぎ捨て、水辺までて走って行った。
今では身長170センチ、体重68キロの私も青春時代は体重53キロで痩せていた。日本では海水浴に行っても自分がやせていることにあまり意識が無かったが、フランス人男性は上半身筋骨隆々でよい体格をしている。それに圧倒され、とても裸になれない自分がいた。「こんなことならもっと身体鍛えておけばよかった」とコンプレックスを強く感じその場をにごした・・・。(本年もフォローありがとうございました。良いお年をお迎えください。勝田陶人舎・冨岡伸一)